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ビルは何年で老朽化する?耐用年数が過ぎたら建て替えが必要なのか

ビルが老朽化してしまうまでには、何年かかるのでしょうか。

ビルをはじめとした建物には、耐用年数が設定されています。この耐用年数を、建物が老朽化してしまうまでの寿命だと勘違いしているケースもあるようですが、そうではありません。建物の寿命は管理方法や立地などのさまざまな要因によって決まります。

今回は、実際にビルが老朽化するまでの期間や、すぐに老朽化させないための工夫を紹介します。また、すでに所有ビルが老朽化してしまっている場合の対策についても考えてみましょう。

 

ビルは何年で老朽化する?

建物の老朽化と耐用年数

ビルは何年で老朽化すると考えられるのでしょうか。また、ビルの耐用年数とはどういったものなのでしょうか。改めてビルの耐用年数と老朽化について理解しましょう。

ビルの耐用年数は?

建物の耐用年数とは、税法上定められた建物の資産価値がなくなるまでの年数のことです。

法定耐用年数ともいわれ、毎年減価償却した結果、償却がなくなるまでの期間を設定するために設けられています。減価償却とは、毎年建物の価値が下がることを計上していく会計上の仕組みです。

つまり、耐用年数とは、建物自体が壊れるまでの年数ではありません。

建物の構造や用途によって耐用年数は異なります。以下は、ビルの構造として一般的に使用されている重量鉄骨造と鉄筋コンクリート造の耐用年数です。

構造 住居用(年) 事務所用(年)
鉄筋コンクリート造 47 50
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超) 34 38
重量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超~4mm以下) 27 30
重量鉄骨造(骨格材肉厚3mm以下) 19 22

 

耐用年数が過ぎたビル、どういった問題がある?

耐用年数が過ぎたビルには以下の2つの問題が発生します。

  •  融資を受けにくくなる
  •  維持費がかかる

多くの金融機関では、法定耐用年数を融資基準としています。耐用年数を超えたビルは、老朽化により家賃収入の回収が難しいと判断され、評価額がなくなります。そのため、金融機関から融資を受けることが困難になります。

また、耐用年数が過ぎたビルは、すぐに壊れるというわけではありませんが、建物の老朽化が進んでいます。そのため、外壁や屋根などの修繕や設備の交換が必要です。

設備が故障していなくても、機能が古ければ入居者に選んでもらえません。築浅の頃よりも必要なメンテナンスの規模や頻度も増えてくるため、慎重に資金計画を立てておきましょう。

老朽化とは?

耐用年数はあくまでも減価償却のための数値であり、耐用年数を超えたからといって、建物自体が老朽化してしまったわけではありません。

建物の寿命は、環境やメンテナンスの影響で変わります。適切なメンテナンスができていれば、建物の老朽化を遅らせられるため、50年〜60年以上、長ければ100年以上維持できます。

2013年の国土交通省の報告書「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」では、以下のような報告がされています。

  •  RC造建築の寿命は117年
  •  マンションの寿命は120年で、メンテンナンスにより150年まで延命できる

反対にメンテナンスができていなければ当然寿命は短くなるため、結果的に大規模なメンテナンスが必要になるケースも考えられます。

 

ビルを老朽化させない工夫

ビルを老朽化を防ぐためのメンテナンス

ビルの老朽化はメンテナンスだけでなく、建材の質や耐震性、配管設備、立地条件の影響も要因です。

老朽化させる要素を確認して、どのような工夫をすればビルの老朽化を防げるのか考えてみましょう。

管理方法

ビルの老朽化は、日々のメンテナンスなどの管理方法で遅らせることができます。

外壁塗装や屋上の防水は、長くても15年を目安に修繕が必要です。それ以外にも、以下のようにこまめに修繕が必要な箇所もあります。

  • さび止め塗装
  •  扉の潤滑油差し
  •  ガラス交換

国土交通省は「長期修繕計画標準様式」「長期修繕計画作成ガイドライン」を策定しました。ここでは、25年先の大規模修繕を想定した長期修繕計画に基づいた修繕を推奨しています。

修繕計画によって適切なメンテナンスができるため、必ず作成しましょう。

建材の質

コンクリートの質はビルの寿命に大きく影響を与えます。

1970年代に建てられたマンションでは、質が悪いコンクリートの使用により、築10年ほどで雨漏りが発生したケースが相次いだそうです。

また、給排水管に使用されている材料も確認が必要です。メッキ鋼管はさびやすくメンテナンスが必要になるため、塩化ビニール管の使用が推奨されています。

耐震性

耐震性はビルの寿命に大きく関わります。1981年6月1日以前に施工された建築物は「旧耐震基準」で建てられたため、現在の「新耐震基準」を満たしていません。「旧耐震基準」では震度5の地震に対する耐震性が基準となっていました。

「新耐震基準」では、震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊しない耐震基準が要求されています。そのため「新耐震基準」で建てられたビルかどうかが、耐震性を判断するひとつの基準になります。

配管設備

配管設備の劣化が、ビルの建て替えの原因となるケースがあります。

配管設備が劣化した場合でも交換や修繕をすれば問題ないはずです。ところが、1960年代から70年代の高度経済成長期に建設されたマンションでは、配管がコンクリートの中に埋め込まれている物件があります。そのような物件では配管を交換できません。

配管の寿命は30年といわれ、1960年代から70年代に建てられた建物であれば、配管の寿命はすでに超えています。しかし、配管の交換ができないため、配管の劣化とともに建物を建て替えざるをえない事態が起こっています。

近年の建物では、容易に配管を交換できるサヤ管ヘッダー工法の普及が進んでいます。それにより、配管の劣化が建物の建て替えに影響することは少なくなりました。

配管交換のしやすさについては、しっかり確認しておきましょう。

立地条件

立地や周辺環境によっては、一般的なビルよりも老朽化しやすい場合があります。

たとえば、日当たりが悪い場所であればカビが発生しやすいです。海に近い場所であれば塩害も避けられません。

また、周辺に背が高い建物がなければ、雨風や太陽の光を建物がまともに浴びて、外壁や屋上防水の劣化が進みやすくなります。

立地条件から考えられる劣化を想定し、環境に合ったメンテナンスを修繕計画に含めておきましょう。

 

老朽化したビルはどうすればいい?

すでに老朽化が進んでしまっている場合は、ビルの建て替えや売却といった策を講じる必要があります。

建て替え

老朽化したビルの対応策として選択されているのは「建て替え」です。建物が新しくなることで収益性も上がります。ただし、建て替えにはデメリットも存在します。

ビルのような大規模な建築物を建て替える費用は、実は中古マンションを購入するよりも高額になります。しっかりとした資産計画を立てたうえで、建て替えを検討する必要があります。

また、入居者がいるビルを建て替える場合、立ち退き交渉が必要です。交渉が上手くいかない場合、建て替えが遅れたり、想定以上の立ち退き料が発生したりといった問題が発生します。

建て替えには、大きなリスクが潜んでいます。

ビルの売却

売却してしまうのも老朽化したビルの対応策のひとつです。売却により、まとまった資金を得ることができます。

ただし、老朽化した建物は金融機関からの評価も低く、簡単には売却できません。

老朽化した物件の売却を得意とする不動産会社を見つけられるかどうかがポイントです。不動産会社によっては、100万円以上も売却価格に差が出ることもあります。売却する場合は、依頼する不動産会社を慎重に選びましょう。

ビル活用

建て替えも売却も難しい場合は、別の用途で活用することも検討しましょう。リノベーションすることで、間取り変更や最新設備を導入できます。

建て替えと比較しても、費用の少なさや工期短縮といったメリットがあります。

一定の費用や、建物の制限によっては導入できない設備があるものの、建て替えや売却と比べるとリスクが少ない対応策といえるでしょう。

活用事例としては、トランクルームやレンタルオフィスがあります。建物の空きフロアを活用して、個人や法人向けにレンタルスペースとして貸し出します。

トランクルームは水回り等の設備を必要とせず、最低限の改修工事で済ますことができるため、改修費用を抑えることができます。

レンタルオフィスであれば、貸会議室やサテライトオフィス、シェアオフィスなどさまざまな使い方が可能です。そのため、企業だけでなくフリーランスの方の利用も見込めます。

これらの活用方法は、老朽化だけでなく空室が多いビルでも検討する必要があるでしょう。立地やニーズを調査し、利用者が見込めるかどうかを検討してから判断しましょう。

 

老朽化したビルに困ったら、まずは加瀬グループにご相談ください

ビルが老朽化したからといって、すぐに取り壊す必要はありません。物件の状況によっては、今のビルのまま新しく生まれ変わらせることも可能です。

しかし、老朽化したビルをどうするのかを自分自身だけで考えるのは、幅広い知識がないと難しいでしょう。

加瀬グループは、豊富な活用方法からお客様の物件に合わせた提案をします。また、老朽化したビルの借り上げや買取も積極的に行っています。ぜひ一度、加瀬グループにお問い合わせください。

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加瀬グループ編集部
加瀬グループ編集部
加瀬グループは、1973年 株式会社加瀬運輸の設立からはじまり、50年以上にわたり地域に密着した事業を展開しています。
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