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駐車場に必要な寸法・スペースから、駐車場全体の設計を考える!

日常生活で何気なく利用している駐車場を設営するには、駐車スペースにどのくらいの寸法が必要か知っているでしょうか。駐車スペースの寸法を間違えると、好適地であっても利用者から敬遠されてしまう可能性があります。そのため、駐車場を設営する際にはドライバーが利用しやすい駐車スペースを確保することが大切です。

このコラムでは、駐車場を設営するにあたって最低限必要な駐車スペースの寸法や、車のサイズごとに最適な駐車スペースの基本寸法などを紹介します。

 

一般的な車のサイズを知ろう!

土地活用の1つである駐車場経営を始める際、駐車場内にとめられる車の台数がとても重要となります。なるべく多くの車がとめられる、且つ利用しやすい駐車場に設計することが利益に直結すると言っても過言ではありません。そのためには、まず駐車場を利用する一般的な車のサイズを知ることです。

一般的な車の分類

車は大きく分けて軽自動車、小型自動車、普通自動車に分類することができます。設営した駐車場が継続的に利用されるためには、これらすべての車のドライバーが快適に利用できることが重要です。全幅の広い車や全長の長い車が白線をはみ出して駐車していると、他のドライバーの迷惑になるだけでなく、駐車場のイメージを損ないかねません。このような事態を防止するためにも、まずはそれぞれの車の平均全長・全幅・全高を知りましょう。

1.軽自動車

軽自動車とは、黄色いナンバープレートの車のことです。税制面で優遇されていますが、ボディサイズに決まりがあります。現在の軽自動車の規格は、全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下です。この中のどれか1つが1ミリでも超えると小型自動車として扱われます。軽自動車には、ムーブやワゴンRなどがあります。

2.小型自動車

小型自動車とは、ナンバープレートの分類番号が5か7で始まる車のことです。そのため、「ファイブナンバー」や「セブンナンバー」と呼ばれることがあります。現在の小型自動車の規格は、全長4.75m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以下です。小型自動車には、フィットやソリオなどがあります。

3.普通自動車

普通自動車とは、ナンバープレートの分類番号が3で始まる車のことで、「スリーナンバー」と呼ばれることもあります。現在の普通自動車の規格は、全長4.7m、全幅1.7m、全高2.0mのいずれかのサイズが上回るか、総排気量2,000cc以上の車となっています。中型自動車には、クラウンやスカイラインなどがあります。

自動車の種類とサイズ

  全長 全幅 全高 車種の例
軽自動車 3.4m以下 1.48m以下 2.0m以下 N-BOX、ワゴンR、ムーヴ、タント など
小型自動車 4.7m以下 1.7m以下 2.0m以下 アクア、フィット、ソリオ、ノート など
普通自動車(※) 4.7m 1.7m 2.0m クラウン、スカイライン、アルファード、ステップワゴン など

※全長・全幅・全高のいずれかが小型自動車を上回る、または総排気量2,000cc以上の車
参考:一般財団法人 自動車検査登録情報協会|自動車の種類

 

車一台あたりの駐車スペースはどのくらい確保する必要があるか

路面上にラインで区切られている、車1台を駐車するのに必要なスペースのことを車室といいます。駐車場経営では、より多くの車室を確保することで、より高い利益を得ることができます。そのため、1台でも多くの車室を確保することは、安定的な駐車場経営を実現するためにも大切な要素の1つです。

とはいえ、土地の広さを考慮せずに車室を多く確保することだけを考えて設営すると、1台ごとの車室が狭くなってしまいます。そうなると、結果的に使いにくい駐車場となり、ドライバーに敬遠されてしまう可能性があります。

こういった事態を避けるためには、最低限の広さを確保した車室を設営することが必要になります。国土交通省の指針では、設計対象車両に応じて長さと幅員を以下のサイズを原則として定めています。

車室の広さの目安

設計対象車両 長さ 幅員
軽自動車 3.6m 2.0m
小型乗用車 5.0m 2.3m
普通乗用車 6.0m 2.5m

参考:国土交通省|駐車場設計・施工指針について

 

駐車場で考慮しなければならない車室以外のスペースとは

駐車場には車室以外にも必要なスペースがあります。このスペースをしっかり確保しなければ、しっかりとした車室があるにも関わらず、利用しにくい駐車場となってしまいます。

必要なスペースその1:車路

車路とは、車を車室に駐車する際に通ったり、切り返しを行ったりするために確保されているスペースのことです。車路幅が十分に確保されてないと、車同士のすれ違いができなかったり、車室に駐車する際の切り返しが難しくなったりします。その結果として、車室に駐車しにくいだけでなく、すれ違いの際のドライバー同士によるトラブルの発生や、車室に駐車する際の他車との接触事故などが起こる可能性が高まります。

こういった事態を防ぐためにも、駐車場を設営する際には適切な車路幅の確保が必要になります。通常、車路幅は3.5m程度が一般的となっています。ただし、車路は駐車場の中央の通路になっている場合には、5m以上はスペースが必要となります。これより小さくなると利用しにくい駐車場と感じてしまう恐れがあるので注意しましょう。

必要なスペースその2:出入口の幅

事故が起こりやすい出入り口の幅にも配慮が必要です。出入り口が狭いと、入ろうとする車と出ようとする車のどちらかが後退して道を譲る必要があります。このような不便な駐車場だと、ドライバーは利用を避けるようになりかねません。

そのため、出入り口の幅は2台の車が同時に出入りできるくらいの幅を確保することが重要です。具体的には、片側3.6m程度あれば十分です。あまり広く取りすぎると不正駐車を招く可能性があるため、車の出入りに支障がない程度に留めておくことが大切です。

また、駐車場法施行令第7条には、出口の構造(見通し角)として「出口の車線の中央において、道路境界から2m下がった位置で1.4mの高さから左右に60度ずつ見通せる構造とすること」という最低基準が規定されています。

必要なスペースその3:車室間や背後の幅

車室と車室の幅を考えることも駐車場設営には大切な要素の1つです。

車は、車種によってドアの大きさやトランクの扉の大きさなどが異なります。たとえば、スポーツタイプや大型車にはドアの大きな車があります。そのため、隣の車室に車が駐車していた場合、上記の寸法ではドアが十分に開けられない可能性があります。

トランクの扉に大型の跳ね上げ式が採用されている車の場合も、背後が壁になっていたり駐車車両があったりすると、上記の寸法では全開にできないかもしれません。そのため、車室は一般的な寸法プラスゆとりを加味して設計することが大切です。

一般的には車と車の幅が60cm程度あればドアの開閉に問題はありません。ただ、この幅はあくまで最低限です。大きなドアを全開にしても隣の車に接触しないようにしたい場合は、90cm程度の幅を確保することが必要になります。

必要な寸法から駐車場全体の設計を考えよう!

これまで紹介してきた車室やその他スペースの寸法から、車1台あたりに必要となる車室と車路幅の標準的な寸法は、概ね長さ5.0m×幅2.5m、車路幅5.0m程度となります。この寸法を基準にして利用車に設定している車の大きさや台数、土地の広さなどを考慮して駐車場を設計します。

車種による設計の工夫

たとえば、軽自動車が多い地域に設営するのであれば、長さ3.6m×幅2.28m程度の車室を多く設置し、大型の車でも余裕をもって駐車できる長さ5.5m×幅3.0m程度の車室を少なめに設営することで、効率的な経営が可能になります。大型車が多い地域であれば逆の構成にし、同じくらいの割合であれば車室もそれに合わせて設営します。

駐車場の形状による設計の工夫

駐車場の形状によっては、中型車や大型車用の車室が確保できないスペースができてしまうことがあります。こういった場合は、思い切って軽自動車専用のスペースにしてしまうことも一案です。その場合は、軽自動車専用の車室であることを示すために、車室の一部に「軽」という字を表示しておくと、軽自動車以外の車の駐車を防止できます。

また、最適な寸法の車室を設営しても、利用者がきちんと白線内に駐車してくれるとは限りません。こういった利用者によるはみ出し駐車を防止するためには、白線を1本のラインではなくU字にすると効果的です。車同士の幅も確保できるため、ドアを開く際の接触事故の防止にも役立ちます。

縦列駐車の車室の寸法

駐車場を利用するドライバーの中には、縦列駐車が苦手な人もいます。すべての駐車場で縦列駐車用の車室が必要なわけではありませんが、土地の広さや形状によっては考える必要が生じます。

縦列駐車に必要な車室の広さは、一般的に車の長さの1.5倍程度です。ただし、この寸法はバックで駐車する場合であって、前から駐車する場合は車の長さの3倍程度が必要になります。バックで駐車の場合、具体的には軽自動車で約5m、小型自動車で約7mの長さの車室が必要です。

障害者用の車室の寸法

その他のケースとして、駐車場に身障者専用の車室を設ける場合は、それに合わせた広さを確保します。車椅子で乗降することを考慮すると、車室の幅は車体用の2.5mに車椅子が転換可能なスペースと、介護者に必要なスペースを合わせた3.5m程度が必要になります。長さは、大型のワンボックスが駐車できる5.5m以上あれば安心です。

また、リフト付車両の利用を想定した乗降スペースの確保も考慮する必要があり、ワンボックスの利用が多い傾向があるため、後部ドア側のスペースの確保がとくに重要です。スペースの確保だけでなく、身障者専用の車室であることを車線塗装によってわかりやすく示したり、不正利用を防止するための表示板などを設けたりすることも大切です。

なお、最適な寸法の車室を設営しても、利用者がきちんと白線内に駐車してくれるとは限りません。このような利用者によるはみ出し駐車を防止するには、白線を1本のラインではなくU字にすると効果的です。車同士の幅も確保できるため、ドアを開く際の接触事故の防止にも役立ちます。

コインパーキングの場合は注意が必要!

車室が広いと利用者にとって駐車がしやすく便利なのは確かですが、コインパーキングを経営する場合は注意が必要です。コインパーキングでは、車室にフラップ板(パークロック)と呼ばれる装置を設置します。フラップ板とは、車が車室に駐車されると上昇してタイヤをロックし、料金が精算されるまで解除されない仕組みの車止めのことです。このフラップ板が設置された車室の幅を広くしすぎると、フラップ板のない位置に駐車されてしまう可能性があります。そうなると、料金を支払わずに駐車されてしまうだけではなく、他の利用者にも迷惑となってしまいます。

そのため、コインパーキングの場合はフラップ板に合わせた幅にする必要があるのです。また、奥行きに関してもあまり長くしすぎると、中途半端な位置に駐車して料金の精算を免れるという不正駐車を招きかねません。利用者の利便性を考えると難しいところですが、コインパーキングの車室を設計する際には、こういった不正駐車を防止することも考慮した長さにすることが必要になります。

 

駐車場の経営は最適な寸法を算出することから始めよう

駐車場の車室は、単に車が駐車できるサイズがあればいいというものではありません。もちろん、車のサイズよりも狭すぎるのは論外ですが、広すぎれば不正駐車が起こってしまう可能性があります。駐車場を安定的に経営していくためには、土地に面する道路事情や駐車場に対する周辺の需要を調査して、最適な寸法を算出することから始めましょう。

 

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加瀬グループ編集部
加瀬グループ編集部
加瀬グループは、1973年 株式会社加瀬運輸の設立からはじまり、50年以上にわたり地域に密着した事業を展開しています。
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