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ビルの耐用年数が過ぎたらどうなる?法定耐用年数と寿命の違いとは

築年数がある程度経過したビルの所有者は、耐用年数が過ぎている、もしくは耐用年数が近いことが気がかりになっているのではないでしょうか。
メンテナンスなどの正しい知識を持って対応しないと、大きなリスクを抱える可能性があります。

本記事では、ビルの耐用年数が過ぎたら起きる影響や、長く活用する方法を解説します。

 

ビルの耐用年数

ビルの耐用年数

ビルの耐用年数は構造によって決まっています。この耐用年数は寿命とは違うため、確認しておきましょう。

法定耐用年数とは

耐用年数とは、一般的に、建物を使用できると税法によって定められた期間のことをいいます。この法定耐用年数は、減価償却という会計処理をする際に利用されます。

ビルの取得に要した費用は、取得した年度の経費として全額を計上することはできません。時間の経過で資産価値は減っていくという減価償却という考え方のもと、1年間ごとに経費として計上します。

これ以上に短い期間で減価償却してはいけない、と定められた期間が耐用年数です。なお、ビルの構造による耐用年数は、以下の表のとおりです。

 

構造 事業用ビルの耐用年数
木造 24年
鉄骨造
※3㎜以下の骨格材肉厚
22年
鉄骨造
※3㎜超4㎜以下の骨格材肉厚
30年
重量鉄骨造
※4㎜超の骨格材肉厚
38年
鉄筋コンクリート造 50年

参考:e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令

 

耐用年数と寿命の違い

法定耐用年数は、あくまでも法的かつ会計上の概念として定められたものです。そのため、耐用年数が過ぎたからといって、すぐに建物を建て替える必要があるわけではありません。

ここでは以下2つの観点からビルの寿命を考えます。

  •  物理的な寿命
  •  経済的な寿命

主観的および客観的な運用と活用の状況に基づいた、ビルの評価基準のひとつです。

ビルの所有者は、法的な耐用年数だけでなく、物理的・経済的な寿命のどちらにも常に気を配る必要があります。

物理的な寿命

物理的な寿命とは、そのビルを建築した目的に供することが困難になる目安の年数のことです。
ビルは老朽化が進み、いずれは使用できなくなります。寿命は十分なメンテナンスによって、その年数を伸ばすことが可能です。

具体的なメンテナンスの方法は後ほど紹介します。

経済的な寿命

経済的な寿命とは、賃貸物件として利用している場合などで、その利用価値がなくなる状態になるまでの期間です。

たとえば、ビルを賃貸物件として活用している場合、古くなってしまったビルの利用価値は低下します。

また、近隣物件と比較して、明らかに設備や機能、間取りなどが陳腐化した場合においても同様です。さらには、最寄駅が閉鎖になり、立地面に優位性がなくなり、競争力が低下するケースも考えられます。

環境やもともとの建物の状態によって変化するため明確な年数は提示しにくいですが、賃貸経営をしている商品が、外的要因により競争力を喪失し、その価値をなくすことは想定されるリスクのひとつです。

賃貸物件における競争力の目安として、経済的な寿命は重要な指標です。

海外の耐用年数との違い

海外では、日本よりも耐用年数が長く設定されていることがあります。

そもそも海外では、ビルを長く利用するという文化が根付いており、不動産投資は管理を買う、という認識があります。管理方法としては、専門家がオーナーの代わりに不動産を運用していくプロパティマネジメントという手法があります。

一方、日本では新築物件に価値があるとされてきました。その背景には、補助金などの奨励による国策があると考えられます。結果として、新築物件こそが価値があるという価値観が、今でも根づいています。

しかし、日本では管理会社の選択はまだまだ重要視されていません。

最近でこそ見直されてきた傾向にありますが、いまだ新築物件に優位性があるという風潮に変わりはありません。

 

ビルの耐用年数が過ぎたらどうなる?

ビルの法的な耐用年数が超過したからといって、利用が制限されることはありません。また、倒壊寸前の状態であるなど、よほどのことがない限り、解体を義務づけられることもありません。

では、耐用年数が過ぎることは、運用や活用において影響がないのでしょうか。

税金の負担が大きくなる

法的な耐用年数を過ぎると、会計上や融資評価に影響を及ぼします。

前述したとおり、耐用年数を過ぎるまでの間は、取得費用を毎年分割して経費計上できます。その経費が、耐用年数を超えると使えなくなる、ということです。

厳密には、減価償却費という勘定科目での経費がなくなります。

収入から経費を差し引いた不動産所得に対しては、税金がかかります。経費として計上する金額が減るとその分、課税対象額が増えるため、税金が多くかかってしまいます。

メンテナンスコストがかかる

倒壊しそうな状態でなくても、耐用年数を過ぎたビルはある程度古いビルといえます。

ビルのメンテナンスは大きく以下の2つに分類でき、それぞれに費用がかかります。

 

ビルの維持管理 ・清掃に関する費用
・法定の点検にかかる費用
ビルの修繕 ・設備の修理や交換にかかる費用
・大規模な修繕にかかる費用

 

このうち、ビルの維持管理に必要な作業は、新築であっても古い物件であっても大きく変動はありません。

しかし、古いビルの場合、経年の劣化によりさまざまな設備や部品が故障したり破損したりします。そのため、ビルの修繕に必要な作業については、築年数が経過するに伴いどんどん高額になってしまいます。

部品交換であれば安価で対応できますが、屋根やビル自体が劣化した場合は、大規模な修繕をするために高額な費用がかかります。

売却しづらくなる

耐用年数を超過した物件については、前述したような減価償却ができません。厳密にはできないことはありませんが、期間がかなり短くなります。

つまり、不動産投資において、節税の有効性が減少するというデメリットが発生します。

また、保有や運用にコストがかかるため、売却しようにも買い手がつきにくくなるリスクがあります。

賃貸需要が減少する

日本では、新築に価値があると認識されているため、古い賃貸物件は人気がない現状があります。
築年数は、賃貸希望者が物件を探す重要な要素であるといえます。

実際、物件検索サイトなどでは、新築物件に絞って調べることが可能です。築年数が経過している古い物件を除外されてしまうと、そもそも検討者の目に触れることがありません。

なお、海外の不動産検索サイトなどで、築年数から選択するという考えはあまりありません。
まったく築年数を鑑みないというわけではありませんが、優先順位は日本ほど高くはありません。

 

耐用年数が過ぎたビルを有効活用する

ビルを有効活用

耐用年数が過ぎそうなビルや、耐用年数を超過したビルは、工夫をすることで有効活用できます。

メンテナンスをしっかり行う

ビルはメンテナンスの方法によって、劣化の進行具合が変わります。定期的な修繕を行うことで、耐用年数を超過してもビルを長く活用できます。

実際に不具合が発生する前に点検をしておくことでも、劣化を大きく防ぐことができます。突発的な対応をするよりも、結果的に維持管理コストも軽減できます。

具体的なメンテナンスの方法を確認してみましょう。

メンテナンスの計画を立てる

まずはメンテナンスの計画を立てることが重要です。

必要な費用がかかってくる時期と予想される収益を可視化させることで、資金計画を明確にできます。

また、メンテナンスが必要な箇所をリストアップして優先順位をつけましょう。効率的なメンテナンスの計画と実施に役立ちます。

ビルの清掃を徹底して行う

日々の清掃を徹底して行うと、建物をきれいに保つだけでなく、異常を早期に発見できます。

たとえば、廊下に落ちていた水滴から、天井配管内の漏水が発見されるケースもあります。細かな変化に気づくためにも、清掃を欠かさないようにしましょう。

また、日々の清掃業務以外にも、3〜6カ月に1度は、ポリッシャーなどを用いての定期清掃をすることをおすすめします。

ビルの寿命を伸ばすという意味でも必須のメンテナンスといえるでしょう。

各種点検を徹底して行う

各種点検には以下のようなものがあります。

  •  消防設備点検
  •  エレベーター点検
  •  給水に関する点検
  •  排水に関する点検

ビルによっては、これらの点検を行わないケースもあります。しかし、急な設備の故障を防止するためにも、積極的に実施しましょう。

中には、法律で定められた期間内に点検が義務付けられているものもあるので注意しましょう。

また、各種点検が完了して不備事項があれば、早期に解決することが大切です。

外壁と屋上を点検する

ビルの外壁や屋上は、紫外線や雨風に常にさらされているため、特に劣化が進みやすいです。

定期的に点検をして、必要に応じて外壁は塗装や修繕を、屋上は防水処理を行うことが重要です。

外壁は主にタイルやコンクリートが落下する危険性を防止することが目的です。メンテナンスが不十分だと、タイルやコンクリートが落下し、歩行者に損害を与えるおそれもあります。

また、防水処理が適切でない場合は、雨漏りが発生して莫大な損害賠償が発生するかもしれません。

外壁と屋上は約10年ごとに簡易な点検と修繕を行い、20年周期で大規模な修繕を行うのがよいでしょう。

運営方法を変える

ビルの劣化は時間の経過とともに進みますが、取り壊してしまうのはもったいないケースもあります。

しかし、賃貸物件として運営していても、需要が見込めなくなる可能性が高いです。
その際、運営方法を変えることで、有効活用できる可能性があります。倉庫や物置がわりになる屋内トランクルームへ転用してみることなどが有効でしょう。

また、一部分のみに不具合が生じているのであれば、活用方法を工夫することで、ビル全体の付加価値を向上させることもできます。

たとえば、排水に不具合があり、水を流せない居室があるとします。そこを改装して、以下のような共有のスペースに転用ができます。

  •  自動販売機を設置した休憩所
  •  喫煙専用スペース
  •  ミーティングスペース

建物の1階部分であれば、駐輪場スペースを設けるのもよいでしょう。また、昨今の震災対策として、備蓄品倉庫があるビルも最近は増加傾向にあります。

共有部分の価値向上をすると、結果的に入れ替わり時における賃料アップが見込めます。

 

耐用年数が過ぎたビルの活用は専門家に相談してみよう

ビルの劣化は避けることのできない運命です。適切なメンテナンスを実施していなかった場合、必ずどこかのタイミングで不具合が発生します。
建替えを検討するのもひとつの選択肢ですが、有効活用できる可能性もあります。

しかし、それを判断することは、専門的な知識がないと難しいでしょう。

そのため、まずは専門家へ相談してみることをおすすめします。専門家であれば、今後発生しうるリスクを可視化してもらえて、今後のビルの扱いについて提案してもらえます。

世の中に同じビルは絶対にありません。成功事例があっても、当てはまるかどうかは別の話です。
今はまだ大丈夫と思わずに、早めに検討することが重要です。早めの準備を進めることで、耐用年数が過ぎた古いビルであっても有効に活用する方法が数多くあります。

加瀬グループでは、これまで数多くのビルの活用実績があります。豊富なノウハウからお客様それぞれに合った活用方法を提案いたします。まずはお気軽に加瀬グループまでご相談ください。

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加瀬グループ編集部
加瀬グループ編集部
加瀬グループは、1973年 株式会社加瀬運輸の設立からはじまり、50年以上にわたり地域に密着した事業を展開しています。
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