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サブリース契約のメリットを解説。デメリットや注意点、向いているケースも紹介

本業があり、あまり賃貸経営に手間や時間をかけられない人などにとって、サブリース方式での賃貸経営は非常に有用です。

サブリース方式とは、賃貸住宅を保有しているオーナーが、そのアパート全戸もしくは一部を不動産会社に貸し、不動産会社が入居者を探して転貸する運営方法です。

オーナーと不動産会社の間でマスターリース契約と呼ばれる賃貸借契約、不動産会社と入居者一人ひとりの間で個別の又貸し契約(サブリース契約)が締結され、入居者との細かいやりとりはすべて不動産会社がやってくれます。

その一方で、「サブリースは危険である」といった話を聞くこともあります。

今回は、サブリースのメリットとデメリットの両方を解説します。そして、サブリースの特性をしっかりと理解した上で、自身に合った方式かどうかを改めて考えてみましょう。

 

サブリースのメリット

サブリースのメリット

賃貸住宅の運営方式には、サブリースのほかにオーナーがすべての運営をする自主管理方式や運営を不動産会社に委託する管理委託方式があります。

サブリース方式のメリットを、それらの方式と比べながら紹介します。

オーナーの手間がかからない

サブリースの最大のメリットは、オーナーの手間を最小限にできることです。不動産投資といえば不労所得のイメージが強いですが、賃貸住宅の経営は想定以上に業務が多くあります。

  •  賃貸住宅の共用部の清掃
  •  入居者との契約
  •  問い合わせ対応

これら以外にも細かな業務が数多くあります。

自主管理方式は、それらすべてを自身で行わなければならないため、専業のオーナーでなければ対応に困ることもあるでしょう。

管理委託方式は、それらの業務のほぼすべてを不動産会社に委託できます。しかし、オーナーが入居者一人ひとりと契約する必要があったり、家賃設定を考えなければならなかったりと、不動産初心者の方には難しい場面があります。

それに対してサブリース方式では、各入居者との契約や日々の業務はすべて不動産会社が行います。オーナーは契約相手である不動産会社とのやりとりだけで済ませられるため、忙しい人でも賃貸経営を継続しやすいといえます。

家賃保証がついている

自主管理方式や管理委託方式では、入居者が出ていってしまった後の空室期間、収入がなくなってしまいます。

サブリース契約は多くの場合、「満室時の〇%は空室の場合でも支払います」という家賃の保証があるため、毎月の収入見通しが立てやすいというメリットがあります(空室期間は家賃支払いが無くなる契約を結ぶこともあります)。

家賃保証は、物件や不動産会社によっても異なりますが、一般的には満室時の80〜90%が相場です。

相続税を抑える効果がある

空室がある場合、サブリース方式はほかの運営方式に比べ土地にかかる相続税を抑える効果が期待できます。

オーナーが亡くなった場合、賃貸住宅の土地と建物に対して相続税が課税されます。相続税の計算では「借地権割合」と呼ばれるものがあり、人に貸している不動産については自らが利用できない分、相続税が割り引かれます。

しかし、もし自主管理方式や管理委託方式でアパートに一時的とはみなされない空室がある場合、空室についての割引が適用されない可能性があります。サブリース方式の場合、オーナーは全戸を不動産会社に一括で貸しているため、この割引を必ず受けることができます。

専門知識不要で不動産経営が可能

サブリースは、手間がかからないことに加えて、不動産経営に関する専門知識がなくても始められることも大きな利点です。

通常の不動産経営では、物件管理や入居者対応など、様々な専門知識が必要となります。サブリースでは、これらの業務を不動産会社が担当するため、不動産投資の初心者でも安心して経営に参加できます。

賃貸経営は、日常業務における知識だけでなく、賃貸市場の動向分析、適切な賃料設定、入居者の審査方法、契約書の作成と法的知識など、様々な知識が必要です。これらを専門家に任せられることは大きなメリットです。

入居者とのトラブル対応を任せられる

不動産経営において、入居者との日々のコミュニケーションや突発的なトラブル対応は、オーナーにとって大きな負担となります。サブリースでは、これらの対応をすべて不動産会社が行います。

深夜の緊急呼び出し(水漏れ、鍵の紛失など)、騒音やゴミ出しなどの生活マナーに関するクレーム、家賃滞納者への対応、退去時のトラブル処理など、様々なケースに不動産会社が対応します。これらのストレスの多い業務から解放されることは、大きなメリットでしょう。

空室・滞納リスクの回避

従来の賃貸経営では、空室や家賃滞納は大きなリスク要因でした。しかし、サブリースでは契約に基づいて一定の家賃が保証されるため、これらのリスクを回避できます。

サブリースによるリスク回避の利点として、景気変動による入居率の変動に左右されないこと、季節要因(例:学生の入れ替わり時期)の影響を受けにくいこと、入居者の個人的事情による突然の退去にも対応可能であること、家賃滞納による収入の不安定化を防止できることなどが挙げられます。

確定申告の簡素化

サブリースを利用すると、確定申告の手続きが大幅に簡素化されます。通常の賃貸経営では、個々の入居者からの家賃収入や様々な経費を細かく記録・計算する必要がありますが、サブリースでは不動産会社からの一括した家賃収入のみを申告すれば良いため、手続きが非常に簡単になります。

複雑な経費計算が不要となり、申告ミスのリスクが減少します。また、確定申告にかかる時間と労力が削減されることは、小さいながらサブリースの1つのメリットと考えられるでしょう。

長期的な資産運用が可能

サブリースは長期契約が一般的であり、10年、20年といった長期にわたって安定した収入を得られる可能性があります。これにより、将来の生活設計や相続対策など、長期的な視点での資産運用が可能となります。

長期的資産運用のメリットとして、安定した収入による生活設計の容易さ、相続税対策としての活用、インフレへの対応、長期的な資産価値の維持・向上などが挙げられます。

 

 

サブリースのデメリット

サブリースのデメリット

サブリースには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。デメリットを理解し、適切に対処することで、より安全で効果的なサブリース契約を結ぶことができます。主要なデメリットについて解説します。

ほかの方式より収益性が劣る場合がある

サブリース契約は、ほかの方式よりオーナーに残る収益が低い傾向があります。

入居者からの家賃収入を100%とした場合、自主管理方式では100%、管理委託方式では委託料の相場である5%を除いた95%が一般的にオーナーに入ります。

サブリース方式の場合、家賃保証がある分オーナーの手取りは80〜90%となるため、ほかの方式と比べてもオーナーの手取りは少なくなる可能性があります。

もちろん、この収入からオーナーは固定資産税などの各種諸費用を払う必要があるため、実際の手残りはより少なくなるでしょう。ただし、満室時の場合で比較しているため、空室ができてしまう場合は一概にサブリースの方が少ないとはいえません。

オーナーが入居者を選べない

デメリットの2つ目は、オーナーが入居者を選べないことです。

ほかの運営方式では、入居者の信用情報からオーナーが入居の可否を選択できます。

サブリース方式ではこういった手間がないメリットがあるものの、入居者の選定についても不動産会社に任せます。そのため、望んでいないような客層が入居してしまう可能性があります。

もちろん不動産会社にとっても、自ら管理する物件に問題の多い人を入居させないという前提はあります。しかし、近隣住民との関係など気になることが多いならば、サブリース方式は一考の余地ありのようです。

不動産会社から賃料改定される可能性がある

賃貸経営では、建物が老朽化するに従い、入居者からの家賃収入の全体的な金額が減少するおそれがあります。

そのため、不動産会社とオーナーとの間で締結されるマスターリース契約では家賃保証に改訂日が定められていることが一般的です。改訂する期間は物件や不動産会社により異なります。

すべての家賃減少リスクまで不動産会社が負担してくれているわけではない点は、十分に理解しておく必要があります。

契約解除が難しい

サブリース契約は長期にわたるものが多く、途中で解約することが難しい場合があります。解約には違約金がかかる可能性もあります。契約期間中に条件に不満を感じても、簡単には契約を解除できないことがあるため、契約時には条件をきちんと確認しましょう。

解約条件と違約金や契約期間中の物件売却の制限、家賃保証条件の変更可能性などを事前に確認し、将来的なリスクを考慮した上で契約を結ぶことが重要です。

物件売却の際、不利に働く可能性がある

サブリース契約中の物件を売却しようとする場合、買主にとってはサブリース契約が大きな制約と捉えられてしまう可能性があります。そのため、売却を検討する際には、契約期間や条件によっては物件の価値が低下したり、買主が限定されたりするかもしれません。

前述のように、サブリース契約の解約は難しいため、サブリース契約が継続したままで売却するケースが多いでしょう。そのため、売却が長期化してしまうケースや価格交渉によってある程度売却価格が値引かれる可能性もあります。

これらの点を考慮し、将来的な売却の可能性も視野に入れた上でサブリース契約を検討することが賢明です。

 

消費者を守るサブリース新法の施行

サブリース新法について解説

サブリース業界において消費者保護の必要性が高まり、2020年12月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」、いわゆる「サブリース新法」が施行されました。この法律は、オーナーの権利を守り、より安全なサブリース契約を可能にすることを目的としています。

サブリース新法施行に至った背景や新法の概要、そして施行後の変化について説明します。

サブリース新法施行の背景

近年、一部の不動産会社による不適切な勧誘や、家賃保証の約束が守られないなどの問題が社会問題化しました。これらの問題に対応し、オーナーの権利を守るために、2020年12月にサブリース新法(「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」)が施行されました。

その背景にはサブリース契約に関わるオーナーと不動産会社のトラブルが多発したことにあります。優良誤認させるような誇大な広告や営業手法により、オーナーを騙すようなかたちでサブリースを結ぶケースや、借主である不動産会社の立場が強くなってしまうことで発生する賃料減額や一方的な契約解除など、本来便利で有用であるサブリースの仕組みを逆手に取った不動産会社が横行したことが大きな原因です。

これらの問題に対処するため、法的規制の強化が必要と判断され、新法が制定されました。

サブリース新法の概要

サブリース新法では、以下のような規制が導入されました。

  1. サブリース業者に対する登録制度の導入:一定の基準を満たした業者のみが登録可能となり、登録業者の情報が公開されるようになりました。
  2. サブリース業者の業務に関する規制の強化:業務管理者の設置義務や書面による契約締結の義務化が定められました。
  3. 誇大広告や不当な勧誘行為の禁止:将来の家賃収入に関する不確実な表示や断定的判断の提供が禁止されました。
  4. 契約締結前の重要事項説明の義務化:契約条件や物件の状況などの詳細な説明が必要となりました。
  5. 契約書面の交付義務:契約内容を明確にした書面の交付が必要となりました。

これらの規制により、オーナーの権利が守られ、より安全なサブリース契約が可能となりました。

新法施行後の変化

新法施行後、サブリース業界全体の透明性が向上し、悪質な業者の排除が進みました。オーナーにとっては、より安心してサブリース契約を結べる環境が整いつつあります。

2023年には、サブリース契約時に重要事項説明書を交付しなかったとして、サブリース新法で初となる監督処分が下され、東京都内の不動産会社(サブリース事業者)に業務停止が下されました。

このように、サブリース新法によって業界の健全化が少しずつ進んでいます。

関連記事:サブリース新法をわかりやすく徹底解説!施行された背景や影響

 

サブリース契約の注意点

サブリース契約の注意点

サブリース契約を結ぶ際には、いくつかの注意点があります。これらの点に十分注意を払うことで、より安全で有利な契約を結ぶことができます。

主要な注意点について解説していきます。

契約内容の確認

サブリース契約を結ぶ際は、保証賃料の金額と改定条件、契約期間と中途解約の条件、物件の修繕・維持管理の責任範囲、契約終了時の原状回復義務などを特に注意深く確認しましょう。

保証賃料については初期の金額だけでなく、定期的な見直しの有無と方法、市場の変動に応じた改定ルールなどを確認することが重要です。また、契約期間と中途解約の条件については、契約期間の長さ、中途解約の可否と違約金の有無、解約予告期間などを明確にしておく必要があります。

これらを細かく確認し、不明な点があれば必ず質問し、理解した上で契約を結ぶようにしましょう。

免責期間の確認

多くのサブリース契約には「免責期間」が設定されています。これは、入居者が退去したあと、数日は家賃の支払いが発生しない(家賃保証が適用されない)期間のことです。この期間の長さと条件を十分に理解しておくことが重要です。

免責期間が長ければ、オーナーの賃料収入が下がり、投資におけるキャッシュフローにも影響を与えてしまいます。

契約期間と更新条件の確認

サブリース契約は長期にわたるものが多いため、契約期間と更新条件を慎重に確認する必要があります。特に、契約期間中の解約条件、更新時の家賃改定ルール、契約更新時の手続きと費用などに注意しましょう。

例えば、契約期間中の解約条件については、解約可能時期、解約手続きの方法、解約時の違約金の有無などを確認します。更新時の家賃改定ルールについては、改定の頻度、改定率の上限・下限、市場の変動を反映させる仕組みなどを明確にしておくことが重要です。

不動産会社の選び方

信頼できる不動産会社を選ぶことが、成功的なサブリース契約の鍵となります。会社の財務状況と実績、過去のトラブル事例の有無、物件管理能力と入居者募集力、カスタマーサポートの質などを考慮して選びましょう。

例えば、会社の財務状況と実績を確認する際は、過去の業績、財務の健全性、業界での評判などを調査します。また、物件管理能力と入居者募集力を評価する際は、管理物件数、空室率、入居者募集の方法と実績などを確認するとよいでしょう。

 

サブリース契約をおすすめするケース

サブリースをおすすめする場合

サブリース方式にはメリットとデメリットが両方あるため、それぞれを理解した上で検討することが重要です。では、サブリースをおすすめするケースとはどういったものがあるのでしょうか。

とにかく手間を省きたい方

サブリース方式の最大のメリットは、手間が省けるということです。

昨今、経済的自立を目的に投資を始める方が増えています。会社勤めや子育てをしながらできる投資としては株式投資などのペーパーアセットが主流ですが、不動産という現物を持ちたい方も多いのではないでしょうか。

そういった副業で賃貸経営をしたい方などは、手間が省けるサブリース方式はおすすめです。

不動産投資初心者の方

不動産投資初心者の方にも、サブリース方式はおすすめです。

賃貸住宅の運営では、想定外のトラブルがよく起こります。入居者が家賃を滞納したり、ゴミや騒音で入居者同士のトラブルの調停を依頼されたりと、不動産のプロでなければ対応に苦慮する場面も少なくありません。サブリース方式であれば、そういった運営はすべて不動産会社に任せることができます。

まずはサブリース方式で不動産会社のノウハウを学び、2棟目からは自主管理に挑戦するというのもよいでしょう。

一定の収入を確保したい方

ローン返済に余裕がなく、一定収入をキープしたいなら、サブリース方式がおすすめです。

賃貸住宅では入居者の入れ替えによる空室はつきものです。よほど立地や建物に自信がある場合でない限り、長期的な建物の劣化とともに賃料が減少したり、空室が生まれてしまったりするリスクは覚悟しておく必要があります。

サブリース方式の家賃保証があれば、契約期間内はそういった心配をすることなく毎月想定通りの収入を得ることができます。

 

まずは加瀬倉庫に相談

今回は、サブリース方式のメリットとデメリットについてご紹介しました。

サブリース方式はオーナーの収益がほかの方式と比べ低くなりやすいというデメリットがあるものの、運営をすべて不動産会社に任せることができることから、不労所得が欲しい方にとってはおすすめの運営方式です。

実際には、物件の状況などによっても収益性は異なりますので、まずは加瀬倉庫に相談してみることをおすすめします。加瀬倉庫なら一般的なマンションやビルといった賃貸物件だけではなく土地や倉庫など、様々な物件に対応しています。

投稿者

加瀬グループ編集部
加瀬グループ編集部
加瀬グループは、1973年 株式会社加瀬運輸の設立からはじまり、50年以上にわたり地域に密着した事業を展開しています。
当社の豊富な経験や実績をもとに、不動産活用でお悩みのオーナー様に便利でわかりやすい情報をお届けします。

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