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空き家を放置するリスクとは?税金・法律・トラブルと対策をわかりやすく解説

空き家の問題は、地方だけの話ではありません。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点の全国の空き家数は約900万戸と過去最多を更新しました。放置された空き家は、税金・法律・近隣トラブルなど、所有者にとって多岐にわたるリスクの可能性があります。

空き家を放置しているとどのようなリスクがあるのかを、「金銭的リスク」「法的リスク」「物理的・防犯リスク」の3点から解説するとともに、その対処法についても紹介します。

 

空き家放置の金銭的リスク

空き家を放置することで最初に顕在化しやすいのが、金銭面のリスクです。ただ持っているだけで、固定資産税の優遇が失われたり、建物の劣化に起因する損害賠償責任を負ったりと、想定外の出費が生じてしまう危険性があるため、注意しなければなりません。

固定資産税の優遇措置が解除される可能性

空き家を所有しているだけで毎年課税される固定資産税ですが、適切に管理されていれば一定の軽減措置が受けられます。しかし放置を続けると、その優遇が失われるリスクがあります。

住宅用地の特例(最大1/6)とは

住宅用地の特例とは、住宅が建っている土地に適用される固定資産税の軽減制度です。200㎡以下の小規模住宅用地であれば課税標準額が6分の1、200㎡を超える部分でも3分の1に抑えられます。

また市街化区域に所在する場合は都市計画税も発生しますが、こちらも同様に最大3分の1まで軽減されます。空き家であっても住宅が残っていれば原則として特例は適用されますが、管理不全の状態にある「特定空家」に指定されると特例は解除されます。

そのため、特例の適用を維持する目的で、適切な管理が行われないまま建物が残され続けるケースも見られます。

特定空き家に指定されると税金はどうなるか

問題となるのは、管理が行き届かず荒廃した状態になった場合です。自治体から「特定空き家」あるいは「管理不全空き家」と認定されたうえで勧告を受けると、住宅用地の特例の対象から除外されます。その結果、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍に跳ね上がります。

2023年12月13日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」の改正では、「管理不全空き家」という新たな区分が設けられました。これは特定空き家に至る手前の段階、つまり窓が割れていたり雑草が繁茂していたりする状態の空き家を指します。

改正前は主に周辺環境に深刻な影響を及ぼす状態の空き家が対象でしたが、現在はより早い段階で税優遇の対象外となり得るため、放置せず適切に管理することの重要性が高まっています。

倒壊・事故による損害賠償責任

税負担の増加に加えて、空き家の物理的な劣化は損害賠償リスクにも直結します。放置された建物が台風や地震をきっかけに倒壊したり、外壁や屋根の一部が落下して通行人や隣家に被害を与えた場合、所有者は多額の賠償責任を負う可能性があります。

工作物責任とは

この責任の根拠となるのが、民法第717条に定められた「工作物責任」です。同条は、土地の工作物(建物・塀・石垣など)の設置や保存に欠陥(瑕疵)があることで他人に損害を与えた場合、第一次的には占有者が、占有者が不在の場合には所有者が賠償責任を負うと定めています。重要なのは、所有者の責任は無過失責任である点です。つまり「知らなかった」「注意していた」という言い訳は通用しません。

判例では、台風や地震といった自然災害が引き金になったとしても、建物の管理が不十分であれば所有者の責任が認められるケースが多数あります。阪神・淡路大震災の際にも、老朽化した建物の倒壊によって所有者の損害賠償責任が認められた判例があります(神戸地裁:平8(ワ)1533号)。

解体費用や管理費の負担

空き家を保有し続けることには、固定資産税以外にも継続的なコストが伴います。建物の劣化を防ぐための草刈りや清掃、専門業者への管理委託費用、さらに最終的に解体を選択した場合には、一般的な30坪の木造住宅の場合、解体費は100万〜200万円程度が目安です。

更地にすれば売却しやすくなる反面、前述の住宅用地の特例が適用されなくなることで固定資産税が増加するという矛盾も抱えています。管理にかかるコストは放置が長引くほど膨らむため、早期の意思決定が財務的にも合理的です。

 

空き家放置の法律リスク

空き家放置の法律リスク

金銭的な負担と並んで見逃せないのが、法的なリスクです。空き家を巡る法制度は2023年の改正以降に大きく強化されており、行政の関与は年々強まっています。

空家等対策特別措置法とは

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」は、適切に管理されていない空き家の増加という社会問題に対応するため、2015年に施行された法律です。市町村が空き家の実態調査を行い、周辺環境への悪影響が認められる空き家に対して指導・勧告・命令・行政代執行といった段階的な措置を講じることができるようにしたものです。

管理不全空き家の新設

2023年の法改正では、従来の「特定空き家」に加えて、「管理不全空き家」という区分が新設されました。これは、倒壊などの危険が差し迫っているわけではないものの、このまま放置すれば特定空き家になるおそれがある状態の建物を指します。

壁の一部が崩れている、雑草が敷地外に伸び出している、といった比較的軽微な管理不足であっても自治体の指導対象となり、勧告を受ければ前述のとおり固定資産税の軽減が外れます。

特定空き家に指定されるまでの流れ

空き家が特定空き家として法的措置の対象になるまでには、段階的なプロセスがあります。まず自治体が現地調査を行い、特定空き家または管理不全空き家に認定されると、所有者に対して助言・指導が行われます。この段階で建物の修繕や清掃、樹木の剪定などの改善措置を講じれば、認定の解除が可能です。

しかし改善が見られない場合は「勧告」へと移行し、固定資産税の特例が失われます。さらに状態が改善されなければ「命令」が出され、最終的には行政代執行という流れになります。

最大50万円の過料が科されるケース

自治体からの「命令」に従わない場合、50万円以下の過料が科されます。過料は刑事罰ではありませんが、行政上の制裁として所有者の信用や財産に直接影響します。命令が出る段階まで放置されたケースは、行政との関係でも法的に追い詰められた状況と言えます。

行政代執行で解体される可能性

命令にも従わない場合、自治体は空き家の除却(解体)や修繕を強制的に執行できる「行政代執行」の手続きに入ります。代執行で生じた費用は所有者に請求されます。自分の意思や判断と無関係に建物が解体され、その費用を後から請求されるという最悪のシナリオです。

建物に愛着がある場合でも、放置は自らの選択肢を狭める結果にしかなりません。

 

空き家放置の物理的・防犯リスク

空き家放置の物理的・防犯リスク

法律や税金の問題に加え、空き家の放置は地域の安全や景観にも深刻な影響を与えます。建物の劣化や不法侵入といった物理的リスクは、所有者自身だけでなく周辺住民にとっても無視できない問題です。

建物倒壊・屋根や外壁の落下

人が住まなくなった建物は、想像以上のスピードで劣化が進みます。適切な換気や温湿度の管理が失われることで木材の腐朽が加速し、数年で構造上の問題が生じる場合もあります。

特に築30年以上の木造住宅では、台風時の強風や積雪、地震などの外力が加わることで屋根材や外壁が脱落するリスクが高まります。こうした事故が隣家や通行人に被害を与えた場合、前述の工作物責任として所有者が損害賠償を負うことになります。

不法侵入・放火・犯罪の拠点化

人目のない空き家は、不法侵入者にとって格好の標的です。建物内への侵入による器物損壊はもちろん、ホームレスの不法占拠や犯罪グループによる拠点としての使用、さらには放火といった重大犯罪に結びつくケースも実際に起きています。

放火の場合、失火者に重大な過失がなければ所有者に賠償責任が生じないケースもありますが、近隣への延焼や消火活動による混乱など、周辺住民への迷惑は計り知れません。

ゴミの不法投棄や害獣被害

管理されていない敷地には、ゴミの不法投棄が集中しやすくなるケースもあります。一度ゴミが捨てられると「捨ててもよい場所」として認識され、さらに投棄が増えるという悪循環が生まれます。また雑草の繁茂した庭や換気されない建物内は、ネズミやイタチ、ハクビシンといった害獣の棲み処になりやすく、隣家への侵入や食害の原因にもなります。

衛生環境の悪化は、地域全体の資産価値にも影響を与えます。

近隣住民とのトラブル

こうした問題の積み重ねは、近隣住民との関係悪化につながります。「草木が越境している」「異臭がする」「ゴミが増えている」といった苦情は、やがて直接的な損害賠償請求や自治体への通報へと発展することもあります。

遠方に住む所有者が問題を把握できないうちに事態が深刻化するケースも多く、後から当事者意識を持っても対応が後手に回りがちです。

 

空き家のリスクを回避する主な対処方法

空き家のリスクを回避する対処方法

ここまで述べてきたリスクは、適切な対処によって大幅に低減できます。空き家の状態や所有者の事情によって最適な方法は異なりますが、いずれにせよ「何もしない」という選択肢が最もリスクを高めることは共通しています。

定期的に管理する

当面は売却や活用の予定がない場合でも、最低限の管理を継続することが重要です。定期的に換気を行い、草木の剪定や清掃を実施することで建物の劣化を遅らせるとともに、特定空き家・管理不全空き家への認定を防ぐことができます。

しかし、遠方に住む所有者にとっては、月に一度の帰省でさえ負担になることもあるでしょう。

空き家管理サービスの活用

そうしたニーズに応えるのが、専門の空き家管理サービスです。月に一度程度の巡回・清掃・換気を代行するサービスは全国各地で提供されており、費用は月額5,000〜15,000円程度が相場です。中には保険が自動付帯されているサービスも登場しており、万が一の事故に備えるという観点でも活用の価値があります。

自治体によっては管理費用の一部を補助する制度も設けられているため、地域の窓口に相談してみることをおすすめします。

売却する

最も根本的なリスク回避策が、空き家を手放すことです。需要のある立地であれば、通常の売買仲介を通じて適正価格での売却が可能です。ただし空き家の状態や立地によっては、通常の仲介では買い手が見つかりにくい場合もあります。

古家付き土地として売る

建物の価値が低い場合でも、土地の需要があれば「古家付き土地」として売り出すことで買い手が見つかるケースがあります。買主が解体費用を見込んで購入するため、更地より安価になることが多いですが、所有者が解体費用を負担せずに済むというメリットがあります。

解体補助金を活用することで、費用面での折り合いがつきやすくなる場合もあります。

空き家買取業者に依頼する

流通性の低い空き家や老朽化が進んだ物件には、不動産買取業者への直接売却という選択肢もあります。仲介売却に比べて売却価格は低くなりますが、現状引き渡しが可能で、リフォームや残置物撤去の手間なく早期に手放せるのが最大のメリットです。

管理の手間やリスクを一刻も早く解消したい場合に有効です。

賃貸・活用する

立地や建物の状態によっては、賃貸物件として活用することでランニングコストをカバーしながらリスクを回避できます。家賃収入を得られるほか、入居者がいることで建物の管理状態も維持されます。通常の居住用賃貸のほか、民泊施設やシェアハウス、地域のコミュニティスペースとして活用する事例も増えています。

ただし老朽化が進んでいる場合は、賃貸に出す前にリフォーム費用が必要となるため、費用対効果を見極めることが重要です。

解体して更地にする

建物の老朽化が著しく、活用・売却ともに難しい場合は、解体して更地にするという選択肢もあります。土地だけであれば買い手が現れやすくなる場合もあり、管理の手間も大幅に軽減されます。

ただし前述のとおり、更地にすると住宅用地の特例が外れて固定資産税が増加するという問題が生じるため、解体後の活用・売却の見通しを立てた上で判断することが不可欠です。自治体によっては空き家解体に対する補助金制度(数十万円〜)を設けているケースもあるため、事前に確認することをおすすめします。

 

空き家を相続した場合にやるべきこと

空き家問題の大きな発生源のひとつが「相続」です。親が亡くなった後の実家が、手続きをしないまま放置されるケースは非常に多く、法制度の観点からも早急な対応が求められています。

2024年開始の相続登記義務化

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。改正不動産登記法により、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請することが義務付けられ、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となります。

この義務化は2024年4月以前に相続が発生したケースにも遡って適用されるため、すでに相続が済んでいるにもかかわらず登記が未了の方も、早急に手続きを進める必要があります。(参考:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」)

相続後に放置するとどうなるか

相続登記をしないまま放置すると、時間の経過とともに問題が複雑化します。次の相続が発生した場合、権利関係がさらに錯綜し、売却や活用の際に多数の相続人から同意を得ることが難しくなります。

また行政から管理不全空き家・特定空き家として認定された場合でも、所有者が不明確なため対応が遅れ、行政代執行後の費用請求が滞るといった問題も生じます。放置は自分だけでなく、次世代への負の遺産を積み上げる行為でもあります。

早めに売却・管理判断をする重要性

相続直後は気持ちの整理がついていない状態で売却や解体の判断をすることへの抵抗感が生じやすいですが、時間が経つほど建物の老朽化が進み、選択肢は狭まっていきます。総務省の調査によると、全国の空き家数は1993年から30年間で約2倍に増加し、野村総合研究所は2043年には空き家率が25.3%に達すると予測しています。

 

空き家の相談は加瀬グループへ

空き家は「いつか対応しよう」と考えているうちに、建物の劣化や税負担の増加、近隣トラブルなどのリスクが大きくなる傾向があります。特に相続で取得した空き家は、権利関係や活用方法の判断が難しいケースも少なくありません。放置するのではなく、売却・賃貸・管理などの選択肢を早めに検討することが重要です。空き家の管理や活用、売却についてお悩みの方は、加瀬グループまでお気軽にご相談ください。

 

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加瀬グループ編集部
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