市街化調整区域の相続を解説。将来を見据えた相続後の計画とは
相続した土地が市街化調整区域にある場合、土地の利用方法が制限されてしまいます。そのため、そもそも相続するかを悩む方もいるでしょう。
しかし、不動産は重要な資産です。せっかくなら有効に活用できる方法を考えて、相続することを検討しましょう。
本記事では、市街化調整区域の相続について、そもそもなぜ相続するべきなのかも併せて詳しく解説します。それを踏まえて、土地を今後どのように扱うべきかを考えてみましょう。
目次
市街化調整区域の相続について
市街化調整区域の土地を相続する時、注意すべきポイントを確認しておきましょう。
市街化調整区域の制限
市街化調整区域は、市街化を制限する区域として定められています。宅地造成などの開発行為や道路・上下水道などの都市施設を整備することが制限されています。
主に農地などを保全する目的があり、区域内に建物を建てる場合には開発許可を得る必要があります。
ただし、公益上必要な施設や、無秩序な市街化が起こるおそれのない施設については許可が不要です。地方公共団体(自治体)によっては、建築要件を緩和しているケースも多いです。
相続税について
相続税を算出する際に土地を評価する方法は、以下の2つあります。
- 路線価方式
- 倍率方式
一般的な(市街化区域の)土地の場合は、相続税を国税庁が定める相続税路線価をもとに決定する路線価方式が採用されます。この相続税路線価は公示価格の約8割程度が目安の価格です。
一方、ほとんどの市街化調整区域の場合は、倍率方式という方法で評価額が算出されます。倍率方式では、固定資産税評価額にエリアにより定まっている倍率をかけて計算します。倍率は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・路線価倍率表」で確認できます。
また、市街化調整区域の土地の固定資産税評価額は、一般的な宅地と比較して大幅に低いことを理解しておきましょう。
市街化調整区域の相続方法
市街化調整区域の土地を相続する方法は、一般的な市街化区域の土地を相続するのとなんら変わることはありません。
相続人が複数の場合、遺産分割協議により相続の割合を決めます。不動産、現預金、証券、など数種類の遺産を分割割合に基づいて相続します。
市街化調整区域は相続するべき?
一般的に市街化調整区域の土地は評価額が低く、建築制限があります。そのため利用方法がなく、相続することに魅力を感じない方もいるでしょう。
そのため、相続をしないという選択肢を検討する場合があります。
しかし、不動産は相続放棄をしても管理義務があり、土地の管理にかかる負担はあまり変わりません。
ここでは、市街化調整区域を相続するべきか考える際のポイントを紹介します。
相続放棄しても管理が必要
相続人のいない不動産は最終的に国庫に帰属しますが、国に所有権が移るまでにはいくつかの手順を踏みます。利用価値のない土地を国有地とする合理性がない場合には、簡単に国有地になりません。
したがって相続放棄したとしても、管理責任はいつまでも残ります。その場合管理を放棄してしまうと、第三者に被害が及び損害賠償請求をされてしまうなどのリスクもあります。
市街化調整区域の土地を相続することになった場合、利用しない土地であっても管理方法について検討する必要があります。
区域が見直される可能性もある
市街化調整区域は将来にわたって厳しい制限を受けるとは限りません。
市区町村は都市計画区域を定めるにあたり、区域を市街化区域と市街化調整区域に区分します。
最近は市街化調整区域であっても、建築要件の緩和をする地方公共団体があります。現状では厳しい制限をしていても、将来、見直しを行う可能性もあります。
また、市街化区域とほとんど変わらない状態で開発された地域では、将来市街化区域に編入される可能性もあります。
一度、相続を放棄した土地は、もう手元に戻ってきません。そのため、将来、活用方法が広がる可能性も考えて所有しておくのもよいでしょう。
活用できないか検討する
市街化調整区域であっても、申請により開発許可を受けられる可能性があります。
- 周辺地域の居住者に対して、日常生活に必要な物品の販売や加工などを行う店舗や事業場
- 市街化調整区域内にある鉱物資源や観光資源などの有効利用を図ることが目的の工作物や建築物
- エネルギー関連(温度、湿度、空気など)の施設であって、市街化区域に建設することが困難なもの
- 農業、林業、漁業で使用する一定以外の建築物や市街化調整区域内で生産される農産物などの処理や貯蔵、加工に必要な建築物や工作物
都市計画法第34条では、上記のように、全部で14項目の要件を定めています。また、それ以外にも、そもそも開発許可が必要ないものもあります。
市街化調整区域におすすめの活用方法は後ほど詳しく紹介します。
せっかく相続した土地は、専門家に相談して、できるだけ有効活用することを検討しましょう。
相続した市街化調整区域の扱い
相続した市街化調整区域の土地の扱いについては、その特性にあった方法を考えましょう。
基本的なポイントをまとめておきます。
売却する
相続した市街化調整区域の土地を売却するには、土地の用途として考えられるポイントをアピールすることが重要です。
- 許可を受けなくても建築できる施設の立地として、交通の便や周辺の状況などが適しているか
- 市民農園、太陽光発電、資材置き場、駐車場などの利用に適しているか
- 都市計画法第34条で定めている許可要件が整いやすいか
- 市区町村が設けている市街化調整区域における緩和要件が適用される地域か
上記のような情報を、空き家バンクや不動産ポータルサイト、空き家・空き地に関する情報発信媒体にできるだけ多く掲載します。
また、建物を建てる目的で購入する買主もいるため、許可のある宅地建物取引業者に売却を依頼しましょう。
ただし、以下の場合は農業委員会の許可が必要です。
- 開発許可が下りる見込みがない
- 具体的な用途が見つからない
- 農地
相続前あるいは相続後、早めに専門家に相談することをおすすめします。
土地信託をする
先祖伝来の土地を相続したため売却できないなどの事情がある場合、賃貸借か地上権の設定により、土地を貸す方法があります。
しかし賃貸人という立場になると、借地人の利用目的に合った状態に土地を常に管理する責任があります。災害により修繕や修復が必要な場合、賃貸人として対応する必要が生じます。
遠隔地にある場合や時間が取れないなどで管理が難しい場合、信託会社や信託銀行に所有権を移転し土地を信託する方法があります。
土地の活用は信託会社が行い、収益から一定の額を、配当として受益できます。信託期間が終了すると、所有権は返還され元の状態に戻ります。
市街化調整区域であっても利用価値のある土地の場合は、有効な方法といえるでしょう。
土地活用をする
市街化調整区域の活用については、区域内や周辺の状況によって活用することが可能です。
特に開発を許可される可能性が高いケース
市街化調整区域内の一定区域に、市区町村が地区計画を定めている場合があります。
市街化調整区域の開発行為は2006年の都市計画法の改正により、市区町村が定める地区計画に適合すると、大規模な開発が可能になりました。
そのため、これまでは市街化調整区域を理由に開発ができなかった場合でも、開発が可能になった地域もあります。
また、50戸連たん制度が適用できる地域もあります。
- 市街化区域に隣接するか近接する
- 市街化区域の生活圏と一体的になっている
- 市街化区域の建物を含めて約50戸以上の建物が連なっている
上記を満たす場合、災害防止などの事情を考慮した基準にしたがって開発が許可されます。
おすすめの活用方法
市街化調整区域でおすすめの活用方法は以下のとおりです。
活用方法 | 概要 |
太陽光発電 | ソーラーパネルを設置して発電した電気を買い取ってもらう方法。日当たりがよい土地に向いている。 |
資材置き場 | 建設業者などに、木材などの資材の置き場所として土地を貸し出す方法。高い収益は見込めないが、初期費用が抑えられる。 |
駐車場 | 建物を建てる必要がないため、初期費用を抑えられる。月極駐車場やコインパーキングがある。 |
社会福祉施設や高齢者施設、医療施設 | 周辺状況によっては、建築許可が下りる可能性が高い。需要があれば高い収益が見込める。 |
市民農園 | 農地の場合、市民に貸し出して体験学習などに利用する方法。 |
土地の条件や周辺環境によって、向いている活用方法は異なります。また、開発許可がいらない可能性もあります。
そのため、一度専門家に相談して、自分の所有する土地の要件などを確認してもらいましょう。
市街化調整区域の活用は加瀬グループにご相談ください!
市街化調整区域の土地を活用する際、自分に適した方法を選ぶためにも、活用実績が豊富な会社に相談しましょう。
必要に応じて、都市計画や建築の専門家、法律上のことであれば司法書士や弁護士、資金や税金のことはファイナンシャル・プランナーや税理士からのアドバイスをもらって、検討するのがよいでしょう。
また、信頼できるような会社であれば、安心して相談できる税理士やファイナンシャル・プランナーを併せて紹介してくれる場合もあります。
加瀬グループでは、市街化調整区域の土地を最大限に活用する方法を、お客様一人ひとりに合わせてご提案いたします。相続した土地の扱いに悩まれている方は、ぜひ一度加瀬グループにご相談ください。
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