市街化調整区域のデメリットは?メリットやほかの区域との違いも紹介
土地は、地方自治体の都市計画により行政区域の利用方法が分けられています。
その中でも、市街化調整区域は自由に住宅を建てることができません。親から相続した不動産を調べると市街化調整区域の土地だった…、このような経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、市街化調整区域のデメリットやほかの区域との違いを紹介します。また、市街化調整区域でもできる土地活用も紹介します。
目次
市街化調整区域について
市街化調整区域が受ける法的な規制と利用方法について紹介します。
市街化調整区域とは
都市計画制度の仕組みは以下のようになっています。
大きく都市計画区域内と都市計画域外に分かれますが、地方の都市によっては都市計画区域ほどの厳密な区分や規制をかけない「準都市計画区域」を設けるケースもあります。
都市計画区域は厳密に都市計画にもとづいた制限や規制を設ける区域です。市街化を促進させる「市街化区域」と市街化を抑制する「市街化調整区域」の2つに区分します。
市街化調整区域では、原則的に建物を建てることや宅地を造成するなどの行為が禁止されています。
市街化調整区域でも可能な建築物
市街化調整区域では建築や宅地造成などの行為を禁止していますが、都市計画法にもとづき「開発行為の許可」を受けると可能になるものがあります。
例外的に開発許可を受けられる特例が適用できる建築物は、都市計画法第34条で定められています。たとえば、以下のような建築物が該当します。
- 開発区域の周辺居住者が利用するための建築物
- 市街化調整区域内の鉱物資源、観光資源、その他の資源を有効に利用するために必要な建築物や工作物
また、許可を受けずに建物を建てることができる除外規定もあります。
都市計画法第29条で定めており、農業・林業・漁業の用に使われる建築物とこれらの業に携わる人の住宅が対象です。
市街化区域との違い
都市計画区域は市街化区域と市街化調整区域に分かれることはすでに述べたとおりです。
市街化を促進させる市街化区域では、市街化調整区域と異なり、建物を建てたり住んだりすることが可能です。
市街化区域では、土地を細かく分けて「用途地域」として以下のように定めています。
分類 | 用途地域 |
住居系 | 第一種低層住居専用地域 |
第二種低層住居専用地域 | |
第一種中高層住居専用地域 | |
第二種中高層住居専用地域 | |
第一種住居地域 | |
第二種住居地域 | |
田園住居地域 | |
準住居地域 | |
商業系 | 近隣商業地域 |
商業地域 | |
工業系 | 準工業地域 |
工業地域 | |
工業専用地域 |
それぞれの用途地域に対し建てられる建物の用途や面積などの規定が定められています。
また、市街化調整区域のない都市計画区域も地方自治体によってはあります。
市街化区域と市街化調整区域に区分されていない区域を「非線引き区域」といいます。規模の小さな自治体ではこのように都市計画区域であっても緩い規制になっており、住宅程度の小さな建物はあまり規制を受けることがありません。
市街化調整区域のデメリットとメリット
市街化調整区域に土地を所有しているデメリットやメリットを確認して、今後の活用方法を検討してみましょう。
デメリット
市街化調整区域は利用したくても利用できないことが大きな欠点です。しかし利用できないだけでなく、負担を強いられるリスクもあります。
課税されることがある
市街化調整区域の土地を所有しているために受けるデメリットとして大きなものは税金です。
不動産は所有しているだけで、固定資産税が毎年かかります。土地と建物の評価額に対して1.4%の税率をかけて税金を計算します。
市街化調整区域は厳しい制限を受けており、原則的に建物を建てることができず利用が難しいです。利用方法が限られ有効活用ができないにもかかわらず、固定資産税の支払いがあっては資産とはいえなくなってしまいます。
管理責任がある
利用することもなく放置された土地は、管理を怠っていると雑草が生い茂り、時にはゴミの放置場所になってしまうこともあります。
不動産は所有者に管理責任があり、万が一所有地内でなにか事故などがあった場合、所有者が法的責任を問われるケースもあります。
相続をした市街化調整区域などは遠隔地の場合や場所が特定できないなど、長い期間放置したままの状態になることを避けなければなりません。
相続しなければならない
市街化調整区域の土地は利用方法がなく、相続してもメリットが少ないため、相続手続きをしないでおくことがあります。
今後は相続登記の義務化が予定されており、メリットの少ない市街化調整区域の土地であっても相続し登記することが求められます。
相続放棄という方法もありますが遺産の一部だけを放棄することはできないため、メリットのない市街化調整区域の土地であっても相続しなければなりません。
建築物を建てられない場合がある
市街化調整区域では、建築できる建物に厳しい制限があります。一般的な住宅であっても、特定の条件を満たさない限り建築できない場合があります。
例えば、農家住宅や分家住宅などの例外を除き、一般の住宅建築には開発許可が必要となることがほとんどです。
インフラ整備が不十分
市街化を抑制する区域のため、道路や上下水道などのインフラ整備が市街化区域に比べて不十分なことがあります。生活の利便性に影響を及ぼす可能性があるため、事前の確認が重要です。
特に、道路幅が狭い、公共下水道が整備されていないなどの課題が見られることがあります。
資産価値の上昇が期待できない
市街化調整区域は開発が制限されているため、将来的な資産価値の上昇を期待することが難しい傾向にあります。
将来の売却が困難
建築制限があることや、インフラ整備の状況から、将来的な売却が困難になる可能性があります。購入を検討する際は、長期的な計画を立てることが重要です。
住宅ローンが利用できない可能性が高い
ほとんどの金融機関では、市街化調整区域の物件に対して住宅ローンが利用できません。
仮にローンが利用できた場合でも、担保評価額が市街化区域より低く設定されてしまいます。そのため、借入可能額が制限される可能性が高くなります。
一般的に、市街化調整区域の物件購入では、頭金の要求額が通常より高くなることが多く、ローン金利も若干高めに設定される傾向にあります。
メリット
市街化調整区域は利用するのには制限があり、デメリットしかないようですが、視点を変えるとメリットもあります。
税金が安い
不動産にかかる固定資産税は、土地の場合、評価額が30万円までは課税されません。
市街化調整区域の評価額は市街化区域の土地と同様の評価になることは少ないです。田畑や山林などの農地や原野または雑種地であることが多く、農地や原野の場合は付近の農地などの評価額が基になります。
雑種地の場合は付近の状況によって「斟酌(しんしゃく)割合」があり、減価され評価額が低くなることが多いです。
そのため、市街化調整区域の土地にかかる固定資産税は、安くなるか課税されないこともあるのです。有効な活用方法がある土地の場合は、固定資産税が安くなることは大きなメリットといえるでしょう。
周辺状況により収益性が高くなる
周辺に住宅地が広がっており市民農園や貸し駐車場などに使用できる場合は、収益性の高い活用方法が可能です。
建物は建てないため、投資額を抑えられます。利用状況に応じて利用スペースを整備するなど、市街化調整区域だからこそできる活用方法があります。
また、市街化調整区域は道路整備がすすんでおらず、アクセスのよい土地の場合は競合相手が少ないです。そのため、エリア内の需要を取り込むことが可能であり、収益性が高くなるケースがあります。
周辺への気兼ねが不要
付近には住宅が建っていることが少なく、周辺の住民への気遣いはあまり必要ありません。
たとえば農業に使用していた古い倉庫を貸しスタジオにするなど、都心で防音設備を完備した建物に改装する場合と比較すると、初期投資は大幅に少ないです。
広い土地ならドックランやスポーツカイトフィールドとして貸し出すなどもよいでしょう。市街化調整区域だからこそできる活用方法が検討できます。
土地価格が安い場合が多い
市街化区域と比較して、一般的に土地価格が安価である傾向があります。
同じ面積でも市街化区域の30~50%程度の価格で購入できるケースも少なくありません。これにより、予算に余裕が生まれ、建物にコストをかけることが可能になります。
また、将来的な固定資産税の負担も比較的軽いため、長期的な観点からもメリットがあるといえます。
ただし、地域や立地条件によって価格差は大きく異なりますので、慎重な検討が必要です。特に、将来的な開発の可能性がある地域では、価格が市街化区域に近い水準になっていることもあります。
自然が豊かな環境に住める
開発が制限されているため、緑地や農地が多く残されており、豊かな自然環境の中で生活することができます。空気が清浄で騒音も少ないため、心身ともにリフレッシュできる環境が整っています。
子どもの自然体験や環境教育の観点からも、理想的な住環境といえるでしょう。
市街化調整区域で住宅を建てる際の注意点
市街化調整区域での住宅建築を検討する場合、以下の点に特に注意が必要です。これらの条件をクリアできるかどうかを事前に十分確認することで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
インフラが不十分な場合がある
先述したように、市街化調整区域では、上下水道、ガス、電気などのインフラ整備状況を事前に確認することが重要です。場合によっては、個別に整備が必要となる可能性もあります。
特に浄化槽の設置や井戸の掘削が必要になるケースもあり、これらの追加コストも考慮に入れる必要があります。
家を建てるために必要な条件がある
市街化調整区域で住宅を建てる際には、地域や自治体によって定められた特定の条件を満たす必要があります。
例えば、既存集落の要件や、分家住宅の条件などがあります。これらの条件は自治体によって異なるため、必ず事前に確認が必要です。
住宅ローンが通らないことがある
前述の通り、住宅ローンの審査が厳しくなる傾向があります。
複数の金融機関に相談し、事前に資金計画を立てることが重要です。場合によっては、頭金を多めに用意する必要が出てくる可能性もあります。
市街化調整区域の購入が向いているケース
こういった制約がある一方で、以下のようなケースでは市街化調整区域の購入がメリットとなる可能性があります。
低コストで土地を手に入れたい人
比較的安価な価格で広い土地を取得できる可能性があります。特に、郊外での生活を検討している方や、資金に制約がある方にとっては魅力的な選択肢となるでしょう。
広い土地がほしい人
市街化区域に比べて広い面積の土地を確保しやすい傾向にあります。庭付き一戸建てや、家庭菜園などのスペースを確保したい方には適している可能性があります。
落ち着いた環境で暮らしたい人
自然豊かで静かな環境を求める方に適しています。特に、子育て世代や定年後の生活を検討している方にとっては、魅力的な選択肢となるでしょう。
市街化調整区域でできる土地活用
市街化調整区域だからこそできる土地活用方法を検討する際、以下のような条件があります。
- 電気、水道、ガスなど都市インフラがなくてもできる
- 投資資金が少なくてもできる
- アウトドアでなければできない
具体的な活用方法の概要をみてみましょう。
駐車場
住宅地や大型の商業施設が近くにあり、駐車場需要の高いエリアにある土地は、駐車場としての活用が考えられます。
駐車場を必要とする施設運営者や事業者にとって、駐車場用途で土地を取得するのではなく、賃借できる土地が周辺にあることは立地選択の重要なポイントといえるでしょう。
面積の小さな土地であっても、アパートやマンションの周辺にある市街化調整区域の空き地は、駐車場用地としての活用が考えられます。
雑草の処理など整備をし「管理看板」を立てておくと反響が期待できます。
市民農園
近年、オーガニック野菜が注目され、食生活に変化が生まれています。自ら野菜や果物を育てて自宅でおいしく食べることを目的に、家庭菜園に取り組む人も増加しています。
住宅地の近くにある畑で農業体験もできる「市民農園」も、市街化調整区域の土地活用として有力です。
土地が農地の場合は地方自治体の承認が必要な場合もありますが、立地条件によっては利用者が多く評判の高い市民農園が実現できます。
資材置き場
市街化調整区域といえば「資材置き場」と連想するほど、以前からあった活用方法です。
資材置き場を求める事業者によっては売買取引になるケースもあり、売買価格も納得できる単価で取引が成立する可能性も高いです。
接道条件や周辺の道路交通網との関係で、売地や貸地の看板を立てておくと反響が高いこともあります。資材置き場であればあまり整備せず現状のままで借り手や買い手が付く可能性もあるでしょう。
キャンプ場
自然環境を活かしたアウトドア施設として活用できます。
キャンプ場の開設には、まず事業計画の策定が重要です。市場調査と需要予測を行い、収支計画を立てることから始めます。必要な設備・施設の検討も慎重に行う必要があります。
法的手続きとしては、開発許可の取得が必須となります。場合によっては農地転用なども必要になるため、事前に関係機関との協議を行うことをおすすめします。
施設整備においては、区画の造成から始まり、給排水設備、トイレ・シャワー施設、駐車場など、必要なインフラを計画的に整備していくことが重要です。
運営面では、スタッフの採用・教育が重要なポイントとなります。また、予約システムの導入や安全管理体制の確立など、運営に必要な体制づくりも忘れてはいけません。
エコスクール
子どもや親子向けに環境学習ができる施設として、エコスクールの設立もひとつの選択肢です。
自然観察会や農業体験、環境工作教室など、様々な教育プログラムを提供することができます。また、食育プログラムやサステナビリティ教育など、時代のニーズに合わせたカリキュラムの開発も可能です。
施設面では、教室・学習スペースの確保が基本となります。加えて、実習用の畑や園地、休憩・食事スペースなども必要です。特に屋外での活動が多くなるため、天候に左右されにくい施設計画が重要となってきます。
運営においては、地域の教育機関との連携が成功のカギとなります。季節に応じたプログラムを開発し、年間を通じて魅力的な学習機会を提供することが求められます。
太陽光発電
太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの発電所として活用することも可能です。
そのためには、まずは事前調査が必須です。日照条件の確認はもちろん、送電線までの距離や地盤状況の確認なども必要不可欠です。また、周辺環境への影響評価も慎重に行う必要があります。
設置には、開発許可申請と電力会社との協議などの手続きやFIT認定(再生可能エネルギーの固定価格買取制度における事業者としての認定)の取得も必要です。特に重要なのは地元説明会の実施で、地域住民の理解を得ることが事業成功の重要な要素となります。
設備選定においては、パネルの種類と性能、パワーコンディショナーの選定など、専門的な知識が必要となります。長期的な運営を見据えて、メンテナンス性や耐久性も重要な検討要素です。
風力発電
風力発電施設の設置についても、まずは詳細な立地調査が必要です。最低1年間の風況調査を行い、事業性を慎重に判断します。また、周辺環境への影響評価も重要で、特に騒音や景観への配慮が求められます。
設置においては、緻密な測量や評価や細かな事業計画(環境アセスメント)が必要となるケースが多く、各種許認可の取得にも時間がかかります。地域住民との合意形成も重要な課題です。電力会社との契約交渉も、事業の成否を左右する重要な要素となります。
設備計画においては、風車の選定から基礎工事の検討、監視システムの構築まで、様々な技術的検討が必要です。特に、長期的なメンテナンス計画の策定は、安定運営のために欠かせない要素となります。
市街化区域があるエリアについて調べる方法
市街化調整区域での土地活用を検討する際は、正確な情報収集が不可欠です。主な調査方法をご紹介します。
自治体に確認する
土地が所在する自治体の都市計画課などで、正確な情報を確認することができます。
法規制や開発許可の条件など、重要な情報を直接確認することができます。特に、建築や開発を検討する際は、必ず自治体に確認することをおすすめします。
物件の資料から調べる
不動産広告や重要事項説明書などの資料で確認することができます。ただし、これらの資料だけでは不十分な場合もあるため、他の方法と組み合わせて調査することをお勧めします。
不動産会社に確認する
専門知識を持つ不動産会社に相談することで、詳細な情報を得ることができます。特に、地域の事情に詳しい地元の不動産会社に相談することで、より具体的なアドバイスを得られる可能性があります。
市街化調整区域の活用は加瀬グループにご相談ください
市街化調整区域だからといって活用するのをあきらめるのは禁物です。上記で取り上げた駐車場や市民農園、資材置き場以外にも、アイデア次第で数多くの活用方法があります。
加瀬グループでは、市街化調整区域の活用方法についてもご相談に応じます。豊富な経験から一人ひとりのお客様が所有する土地に合った活用方法を幅広く提案いたします。
また、物件の借り上げ・買取も積極的に行っているので、ぜひ一度お問い合わせください。
投稿者

-
加瀬グループは、1973年 株式会社加瀬運輸の設立からはじまり、50年以上にわたり地域に密着した事業を展開しています。
当社の豊富な経験や実績をもとに、不動産活用でお悩みのオーナー様に便利でわかりやすい情報をお届けします。
最新の投稿
- 2025年5月26日店舗活用効果的なテナント募集とは?オーナー必見!テナントの空きを埋める方法
- 2025年5月26日店舗活用空き店舗の活用方法6選!チェックポイントと補助金制度も解説
- 2025年4月23日土地活用アパート以外の土地活用法を徹底比較!収益性やリスクなどを解説
- 2025年4月23日土地活用相続した土地の活用方法8選!土地活用と売却の判断基準