いらない土地は相続放棄するしかない?手続きに必要な書類や費用も紹介
土地を相続することになった場合、相続するかしないかは相続人の自由意思で決めることができます。相続放棄をして、相続しないという選択も可能です。
ただし、土地などの不動産は相続放棄しても管理義務が残るため、土地活用などの選択肢も検討することをおすすめします。
本記事では、相続放棄の基本知識から実際の手続きの流れや必要書類などを紹介します。また、相続放棄を決断する前に検討するべきポイントも確認しておきましょう。
目次
土地の相続放棄の概要
相続放棄の詳しい仕組みをみていきましょう。
相続放棄とは
遺産には、以下のようなものがあります。
- 預貯金や現金
- 宝石や貴金属
- 証券
- 不動産などの財産
さらに、借金や連帯保証債務などの「負の財産」も相続対象です。
相続の方法には次の3種類あります。
- 単純承認
無条件で財産と負債を相続する - 限定承認
財産評価額の範囲内で負債も相続する - 相続放棄
財産も負債もすべて放棄する
単純承認は、一般的な相続の意味になります。
限定承認は、相続人全員が共同で家庭裁判所に申述という手続きをします。
たとえば財産が3,000万円と負債が5,000万円あったとします。その場合、財産を3,000万円、負債を3,000万円相続し、残る2,000万円を放棄する方法です。
そして財産から負債を返済し、財産が残ったら相続人全員で分割してそれぞれが相続します。
相続人のなかで負債は一切相続したくない人がいる場合、その人は相続放棄をして、残った相続人全員で限定承認申述を行います。
相続放棄は、財産と負債のすべてを放棄する方法です。この方法も家庭裁判所に申述をします。たとえば「この土地はいらないが、あの土地は相続したい」などと、財産の選別はできません。
相続放棄はすべての財産を放棄しますが、その代わり債務も一切相続しません。そのため、被相続人が持っていた借金の返済は一切する必要がないというメリットがあります。
相続放棄する理由
相続放棄はどのような理由があって行うのでしょうか。メリットとデメリットから考えてみましょう。
メリット | デメリット |
借金などの負債を相続しないので自己の財産を守ることができる |
・ほしい遺産があっても相続できない |
負債を相続すると、ほかの財産を処分して負債を返済して残った遺産に財産価値があるのかが問題です。
もしも、財産を処分してもまだ負債が残るようであれば、もともと持っていた自身の財産から負債の返済をする必要があります。相続放棄すると財産も負債も放棄できるので、もともとの自身の財産が目減りするおそれがありません。
財産と負債を比較して、負債のほうが多いと判断できれば、相続放棄を選択することを検討してよいでしょう。
ただし、相続放棄をしても不動産の管理義務が残ることには注意が必要です。
空家等対策の推進に関する特別措置法では、空き家の所有者や管理者に空き家の管理を義務づけています。管理者には、相続放棄をした相続人も含まれます。
相続放棄をしようと考えている土地に古い空き家が建っている場合には、空家等対策特別措置法による管理者責任が問われるので注意が必要です。
管理義務について
土地の相続を放棄すると、その土地の相続権は次の順位の相続人に移ります。相続人は、第1順位から第3順位まで法律で次のように決まっています。
- 第1順位
子供 - 第2順位
親または祖父母 - 第3順位
兄弟姉妹
亡くなった人がいると、まず遺産は子が相続します。子がいない場合あるいは、いても子が全員相続放棄すると、次に相続するのは親や祖父母です。親や祖父母がいない場合、もしくは相続放棄した場合は兄弟姉妹が相続します。
仮に子が相続放棄すると、相続対象の土地の管理義務は次の順位の相続人が管理するまで、子が管理しなければなりません。そこで相続放棄した子は、祖父母に相続放棄したことを伝え、土地の管理義務が祖父母に移ったことを知らせる必要があります。
祖父母に伝えない限り、土地の管理責任は子が負ったままになります。
祖父母も相続放棄をすると次は第3順位の相続人に移ります。しかし、兄弟姉妹がいない場合あるいは兄弟姉妹が相続放棄をすると、土地の管理義務は最後に相続放棄した人が負います。
最後に相続放棄した人は自身で土地の管理をする必要があります。自身でできない場合は、家庭裁判所に申し立て、相続財産管理人の選任をしてもらいます。
相続財産管理人は被相続人の債務を支払うため、遺産を処分して清算を行い、残った財産は国家に帰属させることが民法で定められています。しかし、相続財産管理人に支払う費用は、相続放棄した土地の管理責任者が負担します。
土地を相続放棄する方法
土地の相続をしたくないので放棄するには、法律にのっとった手続きをする必要があります。相続放棄の詳しい方法についてみていきましょう。
手続きの流れ
相続放棄は家庭裁判所に申述をしますが、相続人の住所地を管轄する裁判所ではないことに注意しましょう。
申述は被相続人(亡くなった人)の最後の住所地の裁判所です。たとえば田舎に住んでいた親が亡くなった場合は、実家の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
申述は相続人本人か、相続人が未成年者または成年被後見人の場合は法定代理人が行います。ただし、以下の場合は特別代理人の選任が必要です。
- 法定代理人が共同相続人
- 法定代理人が複数の未成年者の代理をしており、一部の未成年者の申述を代理する
特別代理人は、相続放棄の申述だけを代理する権限に限定されます。家庭裁判所が専任しますが、一般には相続権のない親族が担うことが望ましいです。
申述書を提出すると約10日で、相続放棄照会書・回答書が届きます。もしくは、相続放棄申述受理通知書が届く場合もあります。
相続放棄照会書・回答書が届いた場合は、必要事項を記入し返送します。すると約10日で、相続放棄申述受理通知書が届き、手続きは終了します。
なお、相続放棄申述受理通知書は1回しか交付されません。相続放棄の証明が必要な場合は、請求して交付してもらうことができます。
書類
相続放棄申述には次の書類が必要です。
すべての人が必要な書類
- 相続放棄の申述書
裁判所のホームページ「家事審判の申立書」からダウンロード可能 - 被相続人の住民票除票または戸籍附票
相続人別に必要な書類
①被相続人の配偶者
②第1順位相続人
③第1順位相続人の代襲相続人
④第2順位相続人
⑤第3順位相続人
⑥第3順位相続人代襲相続人
以下は、相続人別に必要な書類の対応表です。
① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | |
被相続人の死亡記載のある戸籍謄本または除籍謄本か改製原戸籍 | 〇 | 〇 | ||||
本来の相続人の死亡記載のある戸籍謄本または除籍謄本か改製原戸籍 | 〇 | 〇 | ||||
被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本または除籍謄本か改製原戸籍 | 〇 | 〇 | ||||
被相続人の子およびその代襲者で死亡者がいる場合、その子およびその代襲者の出生時から死亡時までの戸籍謄本または除籍謄本か改製原戸籍 | 〇 | 〇 | ||||
被相続人の直系尊属で相続人よりも下の代の直系尊属に死亡者がいる場合、その直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本または除籍謄本か改製原戸籍 | 〇 | |||||
被相続人の直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本または除籍謄本か改製原戸籍 | 〇 |
なお、相続順位の詳細は以下のとおりです。
本来の相続人 | 代襲相続人 | |
第1順位相続人 | 被相続人の子 孫 | 孫、ひ孫 |
第2順位相続人 | 被相続人の父母・祖父母 | |
第3順位相続人 | 兄弟姉妹 | おい、めい |
費用
相続放棄手続きには、以下の費用がかかります。
項目 | 費用 |
裁判所に納める費用 | ・収入印紙800円(申述人1人あたり) ・郵便切手数百円 |
戸籍謄本などの取得費用 | 約1,000円 |
戸籍謄本取得のための交通費や郵便切手代 | 状況に応じて異なる |
自身で申述書を作成し手続きする場合は、上記のように数千円で済みますが、専門家に依頼する方法もあります。司法書士や弁護士に依頼すると、数万〜十数万円の依頼費用がかかります。
また、申述書は裁判所に郵送で提出できるため、わざわざ裁判所に出向く必要はありません。
期限
民法第915条では、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に相続を承認するか放棄しなければならないと定めています。
しかし、相続の開始があったことを知った時を客観的に証明することは難しいです。そのため、一般的には被相続人が亡くなった日から3カ月以内と認識しておくとよいでしょう。
相続放棄を行うには相続財産を調査して、プラスの財産とマイナスの財産の両方をできるだけ正確に把握する必要があり、時間がかかる場合もあります。そのための期間を熟慮期間といいます。
3カ月以内に申述することができない場合には、期間を延長することが可能です。この場合、相続の承認または放棄の期間伸長の申立を家庭裁判所に行います。
手続きに必要な添付書類や費用は、相続放棄申述と同様です。またこの申立は亡くなった日から3カ月以内にする必要があります。
注意点
相続放棄する場合の注意点は、次のとおりです。
- 3カ月以内の期限はしっかり守る必要があり、万が一間に合わない場合には期間の延長を申し立てる
- 相続放棄前に遺産を処分する、または不動産の名義を変更すると相続放棄ができない
- 相続放棄は撤回できない
- 相続放棄しても不動産の管理義務は残る
相続放棄の前に検討すること
相続の方法を選択する期間は3カ月です。結論を急がず3カ月の熟慮期間を有効に使って、ここで紹介することを検討しておきましょう。
限定承認を検討する
相続人が複数人いて意思疎通が普通にとれる場合は、相続人同士で話し合いましょう。遺産の内容をできるだけ詳しく調査し、限定承認を選択する方法も検討します。
たとえば借金のある親と同居していた子が相続人であり、同居していた住居を買い取る資金力があるとします。この場合、住宅の土地建物を相続し、それに見合う分だけの借金を相続して返済することが可能です。
限定承認は相続人全員が申述しますが、ほかの相続人が全員相続放棄すると相続人はひとりだけになります。限定承認がしやすく住宅を手放さずに済みます。
財産と負債を正確に把握する
相続は3カ月間の熟慮期間を利用して財産と負債を調査し、単純承認・限定承認・相続放棄のどれかを選択します。単純承認以外は裁判所での手続きが必要ですが、一度手続きするとキャンセルができません。
また、財産にわずかでも変更を加え、処分してしまうと単純相続したものとみなされます。
たとえば以下のような事実があると相続放棄はできなくなります。
- 被相続人の債権者に遺産の一部から返済を一部した
- 預金口座からお金を下し葬儀費用以外に使った
相続の仕方を決めるにはできるだけ早く、財産と負債を正確に把握することが大切です。
土地の活用はできないか
遺産のなかに活用できる土地がないかを検討することも重要です。相続放棄はすべての財産を放棄することになりますが、放棄した後に土地が活用できると分かっても手遅れになります。
特殊な事情以外では、相続放棄の取消しができません。相続放棄した後も管理義務が残ることは前述しましたが、土地を管理する過程で活用方法を発見できる可能性はゼロではありません。
土地活用により収入を得られれば、遺産に負債があっても返済をしたうえで手元にお金が残る可能性があります。
3カ月間という熟慮期間はけっして長いものではありません。ご家族が所有する不動産のなかに活用の可能性がある土地がもしあれば、所有者が生前のうちから検討しておくことも必要でしょう。
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相続放棄をしても、土地の管理義務が残ります。国庫に帰属されるとはいっても利用価値のない土地の場合は、簡単に国に所有権が移ることはありません。固定資産税の納税は免れても、管理義務は継続します。
相続放棄がベストな選択ではないとなると、検討したいのが土地活用です。土地活用の見込みがあるかどうかは、次のようなことを判断材料にします。
- 事業用途
- 対象とする顧客層
- 事業収益性
- 必要資金
- 必要な人材
これらは専門家の知見がなくては、なかなか考え方をまとめることはできません。
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加瀬グループは、1973年 株式会社加瀬運輸の設立からはじまり、50年以上にわたり地域に密着した事業を展開しています。
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