ビルのオーナーは儲からない?知っておきたい、その理由

首都圏のデータを見ると、オフィスビルの賃料は上昇傾向にあり、空室率も改善しつつあります。その一方で、地方のビルや老朽化したビル、需要のない立地のビルのオーナーからは儲からないといった声がいまもあがっています。
ビルのオーナーが儲からないと言われる理由や収益構造、ビル経営を成功させる方法について解説します。
目次
ビルのオーナーが儲からないと言われる理由
安定した収益が見込めるビル経営ですが、実際にはなかなか儲からないケースもあります。その背景には、空室リスクや高額な修繕費、景気の影響など、さまざまな要素が潜んでいます。
はじめに、ビルのオーナーが儲からないと言われる理由について解説しましょう。
空室リスクの影響が大きい
ビルのオーナーが儲からないといわれる主な理由の1つに、「空室リスクの影響」があります。ビル経営の柱は賃貸収入のため、テナント(借主)が入らず空室が続くと収益が大きく下がるためです。
特に立地が悪い、築年数が古い、設備が時代遅れといった要因があると、空室率が高まりやすくて安定した収入が見込めないでしょう。
空室を解消するための広告費やリフォーム費用も賃貸住宅以上に必要になり、負担が増す点も儲からないといわれる要因です。空室が長引くと経営が苦しくなるので、早めにテナントを入れなくてはなりません。
老朽化による修繕コストがかかる
老朽化による修繕コストの負担も、ビルのオーナーの利益を圧迫する大きな要因です。ビルは年数が経つにつれて傷むため、外壁や配管、エレベーターなど、さまざまな設備の修理や交換が必要です。
特に築年数が古い物件では、日常的なメンテナンスに加え、大規模な改修工事も避けて通れません。こうした工事には数百万円から数千万円の費用がかかることもあり、経営を圧迫します。
そのため、たとえ家賃収入が安定していても、実際には出費が多く、思ったような利益が出にくいのです。
競合のビルが建設されるおそれがある
ビルのオーナーが儲からないといわれる理由の1つに、競合のビルが新たに建設されることも挙げられます。新しいビルが近隣に建てられると、設備や外観が現代的で魅力的なため、テナントがそちらへ移ってしまうおそれがあります。
似た用途のビルが密集するのはビル経営の構造的な問題であり、ビルのオーナーが避けて通れないリスクです。
また、供給過多になると近隣の賃料相場が下がり、収益性が悪化します。競合の出現は想定外の収入減につながるため、ビル経営の大きなリスクとなります。
景気の動向で収益性が変化する
景気の動向によって、収益性が大きく変化することもあります。ビル経営ではオフィスや店舗を利用する企業が主なテナントとなるため、景気が悪化したり、テナントの業績が落ち込んだりすると、解約や賃料の値下げ交渉が発生しやすくなります。特にコロナ禍以降、テレワークの普及によってオフィス需要が減少し、オフィス自体が不要という企業も増加しました。
このように、社会や経済の変化に強く影響される点がビル経営の大きなリスクであり、収益性の不安定さにつながっています。
初期費用が高い
初期費用の高さもビルのオーナーが儲からない理由の1つです。ビル経営には土地の取得費用や建設費、設備投資のほか、広告費や人件費、各種申請手数料など多くの費用が発生します。
特に都市部では土地の価格が高いため、初期投資額が大きくなりがちです。さらに、経営開始の段階から多額の借入をしている場合、キャッシュフローを圧迫するリスクもあります。
こうした高額な初期費用を回収するには長期間かかるため、収益が出にくいと感じるオーナーは少なくありません。
検証!ビルオーナーの収益構造
ビルオーナーの収益は賃料収入が中心ですが、それだけではありません。
副収入や経営戦略によって収益性は大きく変わります。ここでは、ビル経営の実態と収益構造について解説します。
オーナーの収入源と収益構造
ビルのオーナーの収益構造は、主にテナントからの賃料収入によって成り立っています。加えて共益費や駐車場使用料、広告掲載料、携帯基地局の設置料、ATMや自動販売機の設置による収益など多様な副次収入も見込めます。
さらに、屋上や空きスペースを活用したイベント開催やポップアップ店舗の貸出なども、新たな収益源となります。
テナントの業種を多様化して景気変動のリスクを抑え、柔軟な空間運用によって収益性を高めると安定的な経営につながります。
ビル運営の利回りの目安
利回りは、投資額に対してどの程度のリターン(収益)があるかを把握する目安です。利回りには「表面利回り」と「実質利回り」という2種類の考え方があります。
「表面利回り」は年間の家賃収入を購入価格で割ったものです。一般的に表面利回りが高いほど融資を受けやすく、テナント系では7〜8%が相場といわれています。
「表面利回り」は修繕費・維持管理費などの費用を計算に入れておらず、実際に発生する費用を考慮する場合は「実質利回り」を用います。
実質利回りの計算式は以下のとおりです。
実質利回りの計算式=(年間家賃収入 - 年間諸経費) ÷ (物件購入価格 + 購入時の諸経費)× 100
たとえば、1室20万円の賃料で10室満室の場合、年間の賃料収入は2,400万円です。そこからローンの返済や管理手数料、修繕費、税金などで800万円の支出があると、残る利益は1,600万円です。このビルを2億円で購入した場合の実質利回りは約8%です。
ローン利用時には返済計画とキャッシュフローの管理が重要であり、空室リスクを想定した慎重な収支設計が求められます。
賃貸オフィスビルの賃料は上昇傾向
主要都市のオフィスビル空室率と、平均募集賃料の推移をみていきましょう。
国土交通省の「主要都市の高度利用地 地価動向報告」によると、主要都市における賃貸オフィスビルの空室率は主要都市で改善傾向にあり、特に東京・大阪・名古屋では2023年後半以降、徐々に低下しています。
また、平均募集賃料は東京を中心に上昇傾向が見られ、2024年以降は緩やかに右肩上がりの動きを示しています。これにより、都市部のオフィス需要が回復基調にあることがうかがえます。
空室の減少と賃料の上昇が同時に進んでいる状況は、ビル経営においてポジティブな材料であり、今後の投資判断にも大きく影響する要素といえるでしょう。
■主要都市のオフィスビル空室率の推移

■主要都市のオフィスビル平均募集賃料の推移

出典:国土交通省 |不動産・建設経済局 地価調査課 P81
ビル経営を成功させる方法

ビル経営を成功させるには、資金計画や立地選び、信頼できる管理体制など多角的な視点が欠かせません。ここでは、安定した収益を得るための方法について解説します。
自己資金を準備しておく
ビルのオーナーが成功するには、十分な自己資金の準備が欠かせません。
高額な初期費用を調達するには金融機関からの融資を利用するのが一般的ですが、自己資金が多いほど借入額が抑えられ、毎月のローン返済負担を軽減できます。自己資金比率が高いと金融機関からの信用度が高まるため、有利な融資条件を引き出しやすくなります。
自己資金に余裕があれば空室で収入が減った場合や、予期せぬ修繕費が発生したときでも支払いに困らないため、安定したキャッシュフローを維持しやすいでしょう。
ビル経営は長期的な視野で事業を行っていくものです。手元資金に余裕を持たせることで将来の大規模修繕や景気変動リスクへの対応力が高まり、安定的な収益確保へとつながります。
アクセス性に優れた都市部の立地を選ぶ
ビル経営を成功させるには、アクセスの良さが魅力の都市部に物件を構えることが見逃せないポイントです。駅やバス停が近く、通勤や買い物に便利な場所は人通りが多く、オフィスや店舗を探す企業にとって魅力的に映ります。
特に飲食店や物販店、クリニックなどのテナントは、立地次第で集客に大きな差が出るため、どこにビルを構えるかが経営の明暗を分けるといっても過言ではありません。
こうしたアクセスの良いエリアは長期的にも安定した需要が見込め、テナントの入れ替わりも少なくなります。その結果、空室のリスクを抑えられ、安定した賃料収入が見込めます。
ビル経営に特化した管理会社に相談する
ビル経営に特化した管理会社や不動産会社に相談するのもおすすめです。ビル経営にはテナント誘致や修繕計画、法律・税務対応など幅広い専門知識が求められ、一人で対応するのは現実的ではありません。
経験豊富な管理会社であれば、地域の特性や市場動向を踏まえたうえで、テナントに合わせた運営方法や将来を見据えた戦略まで提案してくれます。
特に土地を所有している方であればビルや賃貸住宅の建設、買い替え、売却といった目的に応じた最適な提案をしてくれる不動産会社への相談が重要です。信頼できる専門家と連携することで、リスクを抑えつつ安定したビル経営が実現できます。
ビル経営で困ったら加瀬グループまで
賃貸ビルの管理を1人で行うのは、現実的ではありません。日々、さまざまなトラブルが起こり、それらに対応することを考えると、信頼できるパートナーが必要になるでしょう。また、新しく賃貸ビルの経営を行うなら、ビルの購入、建築などのサポートをしてもらうと、堅実な経営につなげられます。
もし、信頼できるパートナーが必要だと感じたら、加瀬グループへご相談ください。豊富な経験と実績が、安定経営をサポートいたします。人によってはビル経営よりも効率的な投資が見つかるかもしれません。まずは気軽にご相談ください。
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